仕事をしていると会議や商談の議事録や記者発表会の内容についてメモを残したり人の話を聞いてそれを整理したり、後から確認できるように議事録にしたり、その場だけでなく後からやらなければならないことが多く時間を取られている方は多いはず。かく言う私も銀行向けのシステムの企画やセールス支援をしていると、コンタクトメモの作成をしたり、SEと打ち合わせた内容を後から確認したりと打ち合わせの後のメモには苦労しています。
そんな打ち合わせの議事録をAIで作成してくれるツールは色々と登場してきており、最近でいえばZoomやMicrosoft Teamsにも文字起こしと要約作成機能が追加されました。ただ、長時間の会議の後の要約の結果は散々なものでまだまだ実用的ではありません。そんな中、すでに実用レベルの品質を実現しているのがアメリカに本社を置くNicebuild LLC。AIで議事録を作ってくれるPLAUD Noteシリーズを展開しており、その品質の高さで話題となっているメーカーです。今回はそんなNicebuild社のPLAUD AIから新商品”PLAUD NotePin”が発表。発表会の様子やPLAUD NotePinについて紹介します。
AI as a Serviceで働き方改革をサポートするPLAUD AI
まずはこのPLAUD AIシリーズを展開するNicebuild LLC社について紹介。日本市場責任者のWatson Zhang氏が日本語で解説してくれました。Nicebuild LLC社は2021年設立のAIオーディオハードとソフトウェアの設計、開発、販売を行う企業で、(一応)本社はアメリカに設立されたグローバル企業。このNicebuild LLC社が展開するAI関連サービスのブランドが「PLAUD.AI」とのこと。
なおNicebuild社自体は中国・深圳市の他に香港と日本(PLAUD株式会社)にも拠点を有しており、ミッションである「AIと現実生活を結びつける」体験を提供することを目的に取り組んでいるとのこと。個人や企業が最大限の成果を上げられるようにAIデバイスとAIエージェントとなるソフトウェアの、ハードウェアとソフトウェアの両方を展開。AIビジネスパートナーとしての役割を果たしているんだとか。
2023年6月に販売を開始したChatGPT搭載のAIボイスレコーダーであるPLAUD NOTEもこのハードウェアとソフトウェアを融合したAIデバイス。世界全体で50億円以上の売上と25万人のユーザーをすでに獲得しているとのこと。日本では全ユーザーのうち20%にあたる5万人がすでに利用しており、世界で2位なんだとか。1位はアメリカで40%、10万人が利用中とのこと。
完全な皮算用ではありますが、PLAUD NOTEを利用することでユーザー1人あたり、合計で260時間の時間を削減できるとのこと。簡易的に計算すれば1年間でPLAUD NOTEによって62万円もの人件費分の労働を節約してくれる結果になるんだとか。この計算の元は1日平均1時間議事録の作成時間が短くなるというものなので、かなり大雑把な計算ですが議事録の作成が多ければ多いほど効果が大きいと言えるわけです。
先程触れたように日本では全ユーザーのうち20%にあたる5万人がPLAUD AIを利用中。Watson氏曰く、かなり日本は大きい市場と見ており重要な戦略市場とのこと。現時点では「ほとんどが個人の顧客」でそれぞれが仕事などで利用している状態とのこと。利用時間の統計を取ってみても「日本の人がかなり利用している」とのことで日本からのフィードバックを受けながらより製品開発やサービス改善を進めたいとのことでした。
私の所属している企業を始め日本の企業は、セキュリティに関してはかなり厳しい印象。発表会でもデータの取り扱いについてGCP(Google Cloud)、AWS、Azureの米国サーバーに保管していることでデータ保護を図っているとしていましたが、業務利用を考えると国内サーバーでの保管が必須になりそうな印象。
Watson氏いわく、実際に「法人からの問い合わせも来ている」とのこと。現状の有料プランなどは端末に紐づく個人向けのものであり、複数人が利用する法人向けにもなっておらず、データ保管や料金プランについて「法人向けのものについても検討している」とのこと。あともう少しの辛抱でガッツリ仕事でもこのPLAUD NotePinを利用できる日が来るかもしれません。
目立たずに使えるからいつでもどこでも文字起こしと要約ができるPLAUD NotePin
今回発表するのはこれまで展開していた机上においたり、スマートフォンの後ろにつけて利用することを想定していたPLAUD Noteとは大きくデザインを変えた、腕にバンドとして着けたり、服にマグネットで装着したり、ストラップで首から下げて使えるPLAUD Note Pin。グレー、シルバー、パープルの3色展開でスタイルに合わせて色々な使い方ができるというもの。
実際のターゲットとしているのは、例えばリモートワーキングをしているリモートワーカーが、WEB会議をスピーカー経由で流してそれを録音し議事録を作成したり、不動産関係の方が取引説明時の証跡として活用をすること、現場で作業することが多いエンジニアがメモを取る代わりに利用するというのが想定されているとか。他にもクリエイターがなにかアイデアが浮かんだタイミングですぐに取り出して、録音、これを後からASK AI機能で確認するなんて使い方も想定されていました。
PLAUD NotePinはこの小型サイズながら超ロングバッテリーを実現しているのもポイント。スタンバイでは40日間のバッテリー持ち、連続録音は20時間可能で文字起こしをしたいタイミングを逃しません。59か国語に対応し、自動的に話者を判別したり段落分けができる自動文字起こし機能や、用途に応じた要約のテンプレートも用意しているのも特徴です。
内蔵のストレージは64GBと超大容量。480時間分のデータを保存することができるため、まず使い切ることはなさそうです。また、録音のマイクはデュアルMEMSマイクを採用し、小さな音であっても逃さないようになっているのもポイント。AIノイズキャンセリングも搭載し、必要な声をしっかりと拾い上げて要約できるようになっています。
要約をしたり、文字起こしのデータの中から必要な情報を対話形式で確認できる”ASK AI”機能も搭載しているのもポイントで、文字起こしの中にあった期限付きのタスクをピックアップする、なんてことも可能。要約とこのASK AI機能は好みに合わせてOpenAIのGPT4oとClaud3.5のどちらかを選んで利用することもできるため、使ってみてどちらが良いかを踏まえて使っていけます。
録音、文字起こししたデータや、要約した内容はPLAUD AIのWEB版から直接一時リンクで共有することも、Word形式やmp3形式で出力して共有することも可能。会議やインタビューの内容をサクッと録音して、それを文字起こしし、要約してそれを必要な人に渡すというのをPLAUD NotePinで完結できるようになっています。
PLAUD Note Pinは本日から公式販売サイトで予約受付を開始。正式発売は2024年12月から開始の予定。希望小売価格は28,600円とそれなりのお値段。ただ、このPLAUD NotePinを使えば毎月300分の文字起こしや要約、マインドマップの作成機能やAIによる声の強化機能、データのエクスポート機能も含めてほぼすべての機能を利用可能。常に議事録を作成できるツールが使い放題、と考えたら安いかもと思えてきます。毎月1,000円(年契約)のプロプランでは、2,000分に文字起こしできる時間が伸び、要約する際のプロンプトを自身で変更できる”カスタムテンプレート”機能も利用可能です。
PLAUD NotePin 製品スペック表
項目 | 詳細 |
---|---|
ポジショニング | AIアシスタントによる音声記録、文字起こし、要約で業務効率を向上 |
希望小売価格 | 28,600円(税込) |
連携AIモデル | OpenAI GPT-4o、Anthropic Claude 3.5 Sonnet |
サイズ | 縦 51mm × 横 21mm × 厚み 11mm |
重さ | 25g(本体のみ) |
マイク | 2MEMSマイク |
バッテリー容量 | 270 mAh |
ストレージ | 64GB |
内容物 | NotePinデバイス、マグネットピン、クリップ、ネックストラップ、リストバンド、充電ドック、USB-Cケーブル、クイックガイド |
カラー | グレー、シルバー、パープル |
マルチプラットフォーム対応 | クラウド同期でどこでもアクセス可能 |
紛失デバイス捜索機能 | Apple「探す(Find My)ネットワーク」対応 |
音声データの抜き出しから要約作成までアプリでスムーズ。驚きのクオリティの高さ
PLAUD NotePinの説明の段階からはWatson氏が、実際に見に付けているPLAUD NotePinを利用して製品説明について録音、要約をしてくれました。録音のスタートはPLAUD NotePinを長押しするだけ。15分ほどの製品説明が終了した後、録音を停止しPLAUD.AIアプリを使って音声データをアプリ側に同期します。その後WEBにアップロードして要約を開始すれば1,2分であっという間に要約が完成しました。
実際に要約を見てみると、確かに話していた内容(=この記事で書いている内容)がそのままそっくり分かりやすく整理された状態で出力。想定ターゲットの項であれば、きちんと箇条書きで段落分けして記載されており、人間が録音データや文字起こしデータをもとに必死にまとめていたのが馬鹿らしくなるほど。
今後の予定についても”Action Items”としてまとめてくれており、一目で今後の予定も分かるようになっていたのも驚きでした。ただ、余計な項目が入ってしまうことはあり、上の写真であれば”GDPR申請の代行”という謎の項目が用意されていたのは御愛嬌。使い方としては、PLAUD NotePinで要約を作ったら、内容を覚えているうちに見返して修正して議事録を仕上げるというのが良さそうでした。
マインドマップも簡単に確認が可能。打ち合わせの中でどんな話をしていたのかを俯瞰的に確認するなら、こっちのほうが便利そう。専用のマインドマップツールなしで作成してくれるためなかなか利便性が高いようにも感じました。この他、プロ版の専用機能ですがテンプレートのカスタマイズをして、AIが要約をする前に事前情報をインプットする、ということも可能でした。
WEB版の画面からはデータのエクスポートも可能。録音データをmp3形式で出力したり、文字起こしに要約データ、マインドマップを出力して利用することができます。このデータへのリンクを出力しておけば7日間の期間限定で簡単に共有できるので、サクッと共有するならこちらが便利かもしれません。
早速新商品発表会で利用。1時間超の内容であっても正確に要約まで実現
このPLAUD NotePinの発表会と同じ日にPC周辺機器メーカーであるASUSの発表会も開催。Intel Core Ultraシリーズに対応したIntel Z890マザーボードについての発表会にも参加しました。このレポートについては今後ご紹介しますが、早速いただいたPLAUD NotePinをこの会場でも利用してASUS Japanの市川氏(ジョージ氏)の発表内容を録音。腕につけた状態でPCでメモを取ったり、カメラで撮影しながらというシビアな環境で試してみました。
- 【東京ゲームショウ2024】ASUS初のARグラスASUS AirVision M1も登場!モニターもスマホも、Wi-Fiルーターもゲーマーのすべてが詰まったASUS ROGブースレポート
- 【ASUS Zenfone 11 Ultra】Snapdragon 8 Gen 3搭載の高い性能とクセの無いカメラ、おサイフケータイとバランスの取れたハイエンドスマートフォンZenfone 11 Ultraレビュー
- 【ASUS ZenScreen MB166CR】自由な角度に調整できるスタンドが嬉しい。15.6インチのポータブルモニターASUS ZenScreen MB166CRレビュー
- 【CP+ 2024】初出展のASUS ProArtシリーズに5年ぶりのYONGNUO、全天周カメラのKANDAOなど新進気鋭のメーカーが多かったCP+2024レポート
今回の発表はマザーボードだけで14製品、その他にゲーミングキーボードとマウスも発表され、1時間町に及ぶ長丁場。単純な文字起こしだけでもかなりの量になるため、通常のChatGPTではそもそも一度に流し込めない量。ZoomやTeamsの搭載するAIでは意味不明な文章が出てくるレベルであり、正直なところ疑心暗鬼でこの文字起こしのデータをアップロードしていました。
PLAUDアプリでは、PLAUD NotePinから自動的にデータを転送。通常はBluetoothで接続してデータを転送しますが、約2時間分の音声データ(28.2MB)の場合、Bluetoothでの転送では時間がかなりかかってしまうため、”高速伝送”モードの利用がおすすめ。PLAUD NotePinがWi-Fiのホットスポットを作成し、それに自動的に接続することで一気に転送させることができました。
あとは文字起こしと要約をしたい内容を選択して、どのようなサマリーにするか、言語とAIモデルでGPT-4oかClaude3.5のどちらを使うかを選んだら”今すぐ生成”で録音ファイルのアップロードと文字起こしが開始。アップロード中はアプリを開いておく必要がありますが、文字起こしと要約はバックグラウンドで実施が可能。なお、1時間の録音データで約5分かかるとのこと。今回は、要約は移動中にやってしまったので計測していませんでしたが、別のことをやっておけばあっという間でした。
出力された要約データがこちら。正直なところ度肝を抜かれた結果でした。新商品の名称もほぼ正しく記載されており、製品のポイントについてもきちんとまとめてくれていたという結果に。流石にトピックスの階層情報については怪しいところがありましたが、聞き逃したりメモをし忘れた内容についても、この要点としてまとまっており発表会中に必死にメモを取る必要性があるのか、疑問に感じてしまうほどでした。
マインドマップについてもスマートフォンアプリから確認が可能。PCで確認したほうが楽ではありますが、パッとどんな話題があったのかを掘り下げて確認するならスマートフォンからマインドマップを確認してしまえばOK。リンクでの共有や録音データ、文字起こしや要約、マインドマップのエクスポートについてもスマートフォンからも行うことが可能でした。
同じ内容は同期しておけばPCからも確認可能。文字起こしした内容と要約、マインドマップを簡単に確認できます。PC版はPC版でかなり見やすくなっており、スマートフォンでさっと確認しつつガッツリ作業する際にはWEB版で確認しておくと良さそう。詳細な使い勝手は、今後レビューをするので、こちらをお楽しみにしていただければ。
使い道の広さを感じたPLAUD NotePin。すぐに録音して、AIでサマリーを作れる最強デバイス
今回発表されたPLAUD NotePin。発表会の最中に実演デモを見た要約結果もなかなか驚きのものでしたが、それ以上に当日に参加したASUSの発表会での結果にとても驚かされる結果に。圧倒的な正確さを実現し、インタビューや発表会、会議の議事録作成を超・効率化してくれるPLAUD NotePin。本日10月23日から予約を開始中。使い道の広さを感じた最強のAIサマライズデバイスであるPLAUD NotePinに是非注目していただければ。