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【深圳訪問記】折りたたみスマホから熱画像処理搭載スマホまで、快進撃を続けるBlackview訪問レポート

当ブログでも実機のレビューや多くのセール情報で紹介することも多く、また、他のガジェットブログを見ていても多くの記事を見かけることの多いメーカーといえば中国・Blackview。当ブログとの提携が始まったのは意外と遅く、昨年2023年ですが過去の記事を見ていると2016年のEverbuyingのセール記事から実は登場していたことが分かります。

もともとはBlackviewも山塞メーカーの一つで、そこそこの品質のスマートフォンやタブレットを低価格で登場させているメーカーという感じ。私自身も実は全く注目しておらず、2022年6月の「【雑感】中華スマートフォンと中華タブレットは終わったのか。国内正規品で安く、高性能な製品が手に入るようになった中華市場を振り返る」という記事で名前を出しただけでした。しかし、Blackviewはその後かなりのハイペースで新商品を展開し、その存在感を感じる場面が増えてきました。

今回は2024年7月末に中国・深圳を訪問した際にBlackviewの本社も訪問。実際にBlackviewが販売している製品を試したり、今後の製品展開やなぜBlackviewがここまでの存在感を放てているのかを徹底取材。本記事はそんなBlackviewのレポート記事です。

深圳市龙华区に位置するBlackview。従業員1,000人以上、工場面積も8,500㎡を誇る一大企業

Blackviewは中国・深圳の北部・龙华区に本社が位置。福田口岸から伸びる地下鉄4号線の清湖駅から徒歩15分ほどの深圳卫东龙商务大厦のビルの中に位置。清湖駅から歩いていく、もしくは自転車がメインですが、路面電車の深圳有軌電車( 深圳有轨电车)の清龍駅が鉄道駅としては最寄りでここからは5分ほどです。卫东龙商务大厦の13階と8階にBlackviewは入居しています。

Blackviewを展開する企業は、Amazonなどの販売者情報でも見かける深圳市多科电子有限公司(Shenzhen Doke Electronic Co.、Ltd.)。Blackviewブランドは2014年に展開を開始しており、廉価ブランドとして「OSCAL」を2021年展開しています。もともとは他の山塞中華メーカーと同じくパットしないスマートフォンを展開していましたが、2015年に発表したタフネススマホのBV5000から徐々にタフネススマホ路線にシフトしていきます。

BV5000などはまだほそぼそと販売されていた程度で私も特に気にしていませんでしたが、2019年二投入したBV9000から始まるBV9000シリーズがBlackviewの海外展開を加速させる結果に。後述しますが、タフネススマホにさらに機能性を追加する製品をリリースするようになり、サーモグラフィーセンサーを搭載したモデルなど意欲的な製品を多くリリースしています。2020年からはタブレットも販売するようになり、タブレット製品の数の多さは読者の方ならご存知の通りかと。

折りたたみスマートフォンBlackview HERO 10を始めとした特徴的な製品群

Blackviewを語るうえで欠かせないのが、今年発売したばかりの折りたたみスマートフォン、Blackview HERO 10。スペックとしてはMediaTek Helio G99に12GB RAM、256GBストレージとミドルレベルの性能ですが、特徴的なのが「中華スマホ」としてはかなり珍しい折りたたみ式のディスプレイ。6.9インチの大型AMOLEDディスプレイは2560×1080の高解像度で1300nitsの高輝度、かつ、鮮やかな映像描写を可能とした実力モデル。

このディスプレイは折りたたんで半分のサイズにしてしまうことができ、25万回以上の開閉動作の耐久テストも実施済み。ウォータードロップ型のヒンジの採用によって画面を開けた際の隙間を極限まで減らし利用感も高めたというこだわりっぷりのもの。これを10万円を切る価格(Amazonプライムデーなどのセール時)で展開してきたというのは衝撃でした。

実際に実機を触らせてもらいましたが、良い意味で普通の折りたたみスマホ。広げたサイズが6.9インチのため、大画面をコンパクトに持ち歩くというよりかは超コンパクトに大きめのスマホを持ち歩けるという感じの印象でした。撮影させてもらったモデルは、マーケティング担当の方がテストに数ヶ月利用したもの。それでも画面にはシワもなくキレイな印象でした。

もう一つ、ここ1,2年のBlackviewが展開してきたのが熱画像カメラを搭載したスマートフォン。すでに何機種か登場しており4月には世界で初めて高解像度なFLIR®熱画像カメラを搭載したBlackview BL9000 Proをリリース。従来の熱画像カメラにくらべて4倍鮮明な最大160×120の解像度を実現したモデルです。

正直なところ使い道については未知数。実際に訪問時にこの熱画像処理の良さをアピールされましたが、「結局何に使うの?」というところがなんとも言えないところ。確かに写している場所全体で温度の差は認識することができるのですが、それで何かを見つけるということがなく…当日はエアコンが故障した際にどこが故障したのかを、簡単に判別できると説明されました。

熱画像カメラ自体はとてもおもしろく、ただ画面上や見えているものの温度分布を画像として見るのは当たり前。それに加えて指定したポイントの温度を図ったり、一定の範囲の温度の平均値を出したりと、ただサーモグラフィーとして見えるだけではない拡張性を備えています。いつのまにかAmazonでも販売されており95,920円となかなか強気の設定です。

この他にも、大手(OPPO、Xiaomi、Vivoなど)ではないブランドでありながらBlackviewの製品はいち早く5G通信に対応したり、1億画素のカメラを搭載したスマートフォン(Blackview A200 Pro)を販売したりと意欲的な製品が多いのが印象的。同じように中国・深圳を拠点とする中華スマホメーカーはUlefoneやUMIDIGI(前回訪問レポート)に比べて製品開発のペースの速さと、その性能、機能性の高さ、さらには安定した在庫供給の面でBlackviewは高い水準にあると感じます。

Xiaomiなら1年かかる新商品開発を3ヶ月でできる、強力な開発体制

Blackview N6000

Blackviewはタブレットでもかなり多くの製品を展開中。当ブログでも10インチの製品から、8インチのコンパクトモデル(Blackview Tab60)など多くの製品をレビューしてきました。正直なところ、新商品が多すぎて私自身でも追いきれないほどのモデルがリリースされています。そしてその新商品それぞれが何らかの特徴を持った製品になっており、一部のタブレットを除くとただの前モデルからのコピーではない進化のある製品になっていました。

そんなBlackviewに今回は、なぜこんなに多くの製品を投入し続けるのか、そしてどうやってこの水準を保っているのかを聞いてみました。答えてくれたのはマーケティングを担当するSharonさんと、その上司のLucienさんです。

市場へのインパクトのためにも圧倒的な新商品量を確保

まず第一の質問はそもそも何故こんなに沢山の新商品を投入するのか。AmazonでBlackviewの製品を【新着順】に並べて2024年発売分を数えても、ゆうに10製品を超えてくるBlackview。スマートフォンはもちろんのこと、タブレット、スマートウォッチ、ミニPC、最近はポータブル電源(+家庭用蓄電池)まで発売する状況。1ヶ月に2製品くらいのペースで何かしらの新商品が登場しているといっても過言ではありません。

この新商品を出し続ける理由は単純で「そのほうがインパクトがあるから」とのこと。確かに取り上げるブログやメディアの立場からしても、購入を検討している人からしても、同じ製品ラインが変わらないままだとインパクトに欠けますが、1ヶ月に2製品くらい何かが発売されていればレビューしたりする上でも取り上げやすいのは事実です。その戦略が功を奏してか「ロシアでは第3位のメーカーになっている」んだとか。

市場へのインパクトのためにも圧倒的な新商品量を確保というのは、言うは易く行なうは難しで、一つの新商品をリリースするためにはその開発、量産準備、出荷といったその製品自体のために行うことと、Amazonや自社サイトでの販売用の画像素材の準備、さらにマーケティングなどやることづくしです。聞くと、インタビューしたマーケティング担当はもちろんのこと、製品開発を行う技術者も超大忙しなんだとか。

高速製品リリースを支える圧倒的な開発、生産体制

もちろん大量の製品を高速でリリースするためには、ただ大忙しで気合で頑張れば良いというわけではないのも事実。(ただ、中国・深圳の企業は大手企業は完全週休二日制に移行していますが、大半の企業は週休二日制で、法定の有給日数も10年未満は10日・多科电子の有給付与も13日と少ないため労働日数自体は日本に比べて長めです)開発体制を支えるため1,000人以上の技術者を雇用し、開発から生産までの体制の短縮を行っているんだとか。

ディレクターのLucien氏曰く、Blackviewでは一度製品の開発ニーズを掴んだらすぐに開発に移行し、8,500㎡の広さを誇る自社工場での生産行えるようにしているとのこと。この開発スピードについてLucien氏は「Xiaomiなら1年かかる製品リリースを、Blackviewなら3ヶ月もあれば十分」と豪語するほどのもの。「Xiaomiの技術者は電気自動車*に投入されているが、Blackviewの技術者はスマートフォン、タブレットに全力でフォーカスしているからこそできる」とコメントするほど開発体制に自信を見せているのが特徴的でした。

日本向けの販売体制と、マーケット調査についてはこれからの点も

若干日本語に気になる点を感じる公式WEBサイト

以前に比べると日本のブロガー向けの宣伝活動も増え、さらに、日本のAmazonや日本語の自社通販サイトを拡充したことで日本向けのセールスも強化しているように見えるBlackview。ただ、まだまだ日本向けのセールス拡大や製品ニーズの取り込みには課題を感じている点もある様子。多くのメーカーでは日本向けマーケティングには日本語習得者を採用し不完全ながらも日本語でのマーケティングを展開していますが、Blackviewのマーケティング担当は日本語話者ではなかったりとか。ただ、楽天とAmazonのセールスチーム+サポートチームには日本語話者を採用しており、徐々に日本語の監修を強化している様子。

※初出(2024-07-23)から内容を修正しています

また、これはどこの中国メーカーにも言えることですが日本の商習慣や、日本市場でスマートフォンに求められる機能(FeliCaについては全く知らないという反応でした)についての理解は浅い印象。日本の消費者の間ではまだまだ家電量販店というチャネルが大きな影響を及ぼすこと(私自身もXiaomi 13Tはビックカメラで購入してますしね)も意外という感じは印象的でした。

製品開発力に自身があるというBlackviewに対して、モバイルSuica原理主義者のあーるとしてはFeliCaの採用をお願いしたいところ。FeliCa採用のハードルはどうしても高く、XiaomiやOPPO、ASUSといった大手メーカーは日本での戦略モデルに必ず採用しているものの、数が出づらいメーカーではその開発コストを回収できない様子。UnihertzもJelly 2ではFeliCaを採用しましたが後継モデルでは断念してしまっています。とはいえ、やっぱりFeliCaモデルは個人的にはほしいところ。メインとして使うなら無いと不便な場面は多いですしね。

今後も製品展開をどんどん進めるBlackviewの今後の進化にも期待

今回訪問したBlackviewは、中華スマホメーカー、特に2010年代前半の山塞メーカー全盛期から続くメーカーとしては息の長い、そして製品開発、製造力も十分身につけているメーカーという印象でした。ウクライナ侵攻真っ只中で、欧州系メーカーや大手メーカーが大手を振って販売しづらいという点はあるにせよロシア市場では第3位というのも頷ける開発力を感じました。

最近のBlackviewはスマートフォンやタブレットといった小物から打って変わってポータブル電源も発売。OSCAL PowerMax3600(紹介記事)は3,600Whの超大容量と3,000Wというパワフルな出力の意欲的な製品でした。Blackviewでは今後もどんどん新商品をリリースしていく予定。使いやすい、そしてコストパフォマンスに優れた製品が今後も登場してくれることに期待してレポートとできれば。

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銀行をやめて人材系のHRテックらしいメガベンチャーにいたかと思えば、今はSIerで企画とかしています