
シャオミ・ジャパンの発表会に招待いただき、プロダクトプランニング本部長の安達晃彦氏へ取材する機会を得ました。Xiaomi 17Tシリーズの発表に合わせて実施された今回のインタビューでは、製品のスペックではなく、Xiaomi Japanが日本市場でどのような戦略を描いているのかを中心に話を聞いています。発売サイクルの前倒し、FeliCa搭載方針、価格設定の考え方、大型家電の日本展開、店舗拡大、SIMフリー分割払い、そしてGoogleとの関係性まで、多岐にわたるテーマについて話を聞くことができました。
本記事では、安達氏への取材で得られた情報をもとに、Xiaomi Japanの日本市場における事業戦略を読み解いていきます。製品紹介は最小限にとどめ、「なぜそうしたのか」「今後どう動くのか」という視点で整理しました。17Tシリーズの購入を検討している方はもちろん、Xiaomiというブランドの日本での立ち位置に興味がある方にも読んでいただける内容になっているかと。
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8ヶ月サイクルへの短縮はグローバル過渡期の産物。日本市場ではボーナス商戦前という好機に

Xiaomi 17T Proの発売サイクルは、例年の12ヶ月から今回8ヶ月へと短縮されています。この変化の背景にあるのが、グローバル全体でのラインナップ整理です。取材で確認したところ、中国向けラインナップとグローバル向けラインナップの時間差を縮める動きが進行中で、2026年はその過渡期にあたるとのこと。従来の「1年後に次モデル」というサイクルを一旦見直し、全体の整合性を取り直すタイミングだという認識のようです。
日本市場に目を向けると、この前倒しは必ずしも悪いタイミングではないと安達氏は説明。5月末から6月はボーナス商戦の直前にあたり、消費者の購買意欲が高まる時期。加えて、前世代ではXiaomi 15 Ultra(レビュー)の発売から半年後にXiaomi 15T Pro(レビュー)が投入された結果、「15」の型番としての鮮度がすでに落ちていたという反省点もあったようです。

今回は17 Ultraの発売からわずか3ヶ月でTシリーズを投入できたことで、「17」の型番として1年間しっかり販売できるライフサイクルを確保した格好に。Ultraの技術資産を早期にTシリーズへ展開できるという副次効果もあり、ストーリーとしても理解されやすいのではないかとの見方を安達氏は示していました。
ちなみに、型番が「16」をスキップして「17」になった理由は、ベンチマークとなる他社製品に対して数字でビハインドに見えるのを避けるためとのこと。分かりやすさを重視した本社判断だそうです。また、17無印モデルは日本で展開しておらず、17Tとのサイズ・価格帯の重複や、ラインナップ整理の過渡期という事情が背景にあるとの説明がありました。
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グローバル同時ローンチを目標に。エントリー・ミドル・ハイエンドで1機種ずつFeliCa搭載の方針

Xiaomi 17T ProへのFeliCa搭載は、グローバル同時ローンチとして実現しています。このタイミングに至るまでには、SNSの自動翻訳などで製品情報が国境を越えやすくなっている現状があり、安達氏はグローバルと同時ローンチを可能な限り目指す方針で取り組んでいると説明。
では、なぜProだけがFeliCa対応でノーマルの17Tは非対応なのか。この点について安達氏は、日本のスマホ市場は決して大きくないシンプルな市場であるという現実を説明してくれました。すべてのモデルにFeliCaを搭載することはビジネス判断として効率的ではないという認識があるようです。ただし、Xiaomi Japanとしてはエントリー・ミドル・ハイエンドそれぞれで1機種ずつFeliCa付きモデルを市場投入するという考え方を持っている点は注目に値するところ。

実際の展開を時系列で見ると、エントリークラスのFeliCa対応モデルが昨年12月(RDEMI 15 5G)、ミドルクラス(REDMI Note 15 Pro 5G)が今年1月に発売しており、ハイエンドは前世代の発売から8ヶ月を経て17T Proに切り替わっています。年間2モデル程度しかFeliCa対応機を出さないメーカーもある中、Xiaomiは3種類を提供しており、ラインナップの厚さという点で着実に存在感を増しているとのこと。
グローバル比で約8,500円安いオネストプライス。他社の値上げでXiaomiの優位が際立つ

今回のXiaomi 17T Pro(12GB+256GB)の税込価格は119,800円。前世代(15T Pro)比で約1万円の値上げとなっていますが、この数字だけを見て高いと判断するのは早計。グローバルでは同モデルが100ユーロ増となっており、1ユーロ≒185円換算で約18,500円の値上げに相当します。日本では1万円増に抑えたことになり、グローバル比で約8,500円安い計算です。

発表会のスライドでは、メモリ・原材料費の高騰、運送費の増加、為替変動といった価格上昇要因が説明されていました。安達氏は今回の価格設定を「オネストプライス」という言葉で表現しており、コスパの良さとは絶対的な安さではなく、どの価格帯でも性能・体験価値を最大化するというXiaomiの価格哲学を端的に示しているとのこと。
他社は今後ローンチする製品でメモリ価格のインパクトをフルに反映した価格設定になる見込みで、しばらく経てばXiaomiが頑張った価格を付けたことが分かるのではないか、というさらに踏み込んだ見方も安達氏は示していました。なお、日本のXiaomiストアは中国の店舗と比較しても同等か、むしろ安い製品もあるとのことで、国内ストアでの購入を推奨するメッセージも併せて発信していたのが印象的でした。
2026年下期に向けてエアコン・冷蔵庫・洗濯機の展開を検討。日本の商慣習の壁と向き合う

発表会のスライドには「2026年下期に向けて」という文字とともに、エアコン・冷蔵庫・洗濯機の文字が並んでいました。Xiaomiがいよいよ日本でも大型家電に本格参入する可能性を示唆するスライドでしたが、安達氏は時期など詳細が決まり次第改めて案内するという段階だと説明。期待と慎重さが入り混じった表現という印象を受けました。
では、なぜそこまで慎重なのか。その理由は大型家電特有のハードルの高さです。まず、グローバル版をそのまま持ち込むわけにはいかず、日本仕様に仕立てる必要があります。加えて、日本の販売方式や商慣習は調べれば調べるほど複雑(※販売奨励金など)で、価格決定に時間がかかるとのこと。延長保証のような「日本基準」にどこまで合わせるべきかも課題のひとつと安達氏も率直に認めていました。現状のXiaomiケアは「長さより中身の濃さ」で設計しているものの、大型家電ではより長期的な保証を求める声が出てくる可能性もあり、そこは検討の余地があるとのことでした。



販売チャネルのイメージとしては、現在のXiaomiストアと同じ位置づけで考えているとのこと。ストアをショーケースとして「Human×Home」のコンセプトを伝えつつ、配送やアフターケアまで含めて対応できる体制を目標にしていくそうです。いきなり大規模に展開するのではなく、少しずつ進めながら改善していく方針。グローバルではスマートフォン・ラップトップ・タブレットを除いても10億台以上のデバイスがXiaomiのプラットフォームに接続されており、その一端が日本でも体験できる日が近づいているように感じます。
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関西4店舗・名古屋7月オープンで11店舗体制へ。ファミリー層が立ち寄る「習慣」をつくる



シャオミ・ジャパンの直営店舗網は、ここにきて急速に拡大しています。発表会のスライドでは関西に集中オープンした4店舗が紹介されており、イオンモール鶴見緑地店やららぽーと甲子園店など、1ヶ月足らずの間に立て続けに出店を実現していました。さらに、7月中旬には名古屋駅に近いイオンモール Nagoya Noritake Garden店がオープン予定。これで東京・大阪・名古屋の三大商圏すべてにXiaomi Storeが揃うことになります。
Xiaomi Service Center秋葉原店を含めると合計11店舗。スマートフォンメーカーとしては国内最大の直営店舗数です。注目したいのはその出店先で、イオン・ららぽーと・カメイドクロックという選定を見れば、ターゲットがファミリー層であることは明確。安達氏によると、スマホの買い替えだけだと4年に1回しかお客さんに会えないのがもったいなく、ショッピングモールに来るたびにモバイルバッテリーやイヤホンなど何か新しいものがないかと立ち寄ってもらう——そういう習慣をつくっていきたいという狙いを語っていました。



実際に会場では、Xiaomi製品だけでリビングルームを再現した展示コーナーが設けられていました。テレビ・スピーカー・掃除機・空気清浄機・ポットなどを揃えて、税抜96,280円という価格リストが掲示されています。10万円以下で一式揃うというのは、ファミリー層へのエコシステム訴求として非常にわかりやすいところ。感度の高い層は遠方からでもストアに足を運んでいるという実感も語られており、店舗展開に対する手応えが伝わってきました。
36回分割・金利無料でキャリアと変わらない実質負担。SIMフリー文化の浸透がXiaomi戦略の次の鍵

スマートフォンの買い替えサイクルが平均4年を超えるなか、Xiaomi Japanが力を入れようとしているのが、SIMフリー端末の分割払い普及です。発表会のスライドでは後払い分割サービス「アトカラ」が紹介されており、最長36回まで分割手数料・金利無料で利用できることがアピールされていました。安達氏の考え方はシンプルで、一般の方は4年間使うのだから、36回・24回の分割払いにすればキャリアの分割とやっていることは変わらない、と。
この発想をもう少し広げると、好循環の構図が見えてきます。分割払いが浸透すれば、同じ月々の予算でワングレード上の製品を選べるようになる。SIMフリーの販売が伸びれば、これまで日本に投入しにくかった製品も展開しやすくなる——安達氏はこのサイクルへの期待を語っていた印象です。
もっとも、1〜2年で端末を買い替えるガジェット好きにとっては分割のメリットは薄いかなと。ターゲットはあくまで4年サイクルで使い続ける一般層です。同じ予算でXiaomiを選べば、スマホだけでなくイヤホン・ウェアラブル・モバイルバッテリーまで4つ揃うという体験価値の訴求と合わせて考えると、分割払いの普及はXiaomiのエコシステム戦略と表裏一体になっているのではないかと。
AndroidナンバーTwoとしてGoogleの優先パートナー。独自エコシステムとの両立で「いいとこ取り」

「AndroidのナンバーTwo」——今回の取材で安達氏がさらりと口にしたこの言葉は、XiaomiとGoogleの関係性を端的に表しています。毎回の製品発表で案内されるYouTube Premium等の購入特典も、どのメーカーにも提供されているわけではなく、Xiaomiに対する優先的なサポートがあるからこそ実現しているものだという説明がありました。Googleが新たな取り組みを進める際には、グローバル市場でXiaomiとも連携していく関係にあるとのことです。
一方で、Xiaomiには独自エコシステムならではの強みもあります。安達氏自身が驚いたという話として紹介していたのが、秋葉原サービスセンターの展示。地下にあるタブレットやテレビの画面にXiaomi Homeアプリが表示されていて、秋葉原店と亀戸店にあるXiaomi Home対応機器がすべて接続されている様子を確認できるとのこと。独自アプリだからこそのセットアップのしやすさや、相互接続性の安定感は、Google Homeとは別の軸でしっかり確保できているという自信が感じられました。
現在のユーザー層は男性が多めで、年配層から若年層まで幅広いとのこと。中国やブランドへの偏見が少ない若い層は、他の日系メーカーと比べても比率が高いのではないかという実感を安達氏は語っていました。ただし、現状はガジェット好き・スマホに詳しい層がまだ中心。TikTokの活用やIoT製品の展示会出展などを通じて、Xiaomiをまだ知らないユーザーや媒体との接点を増やしていきたいという課題感もあるようです。
「ファーストXiaomi」から大型家電まで。日本市場でのエコシステム戦略が本格始動

今回の取材を通じて感じたのは、Xiaomi Japanが「安いスマホメーカー」という枠を本気で超えようとしている、ということです。発売サイクルの最適化、FeliCa搭載ラインナップの拡充、グローバル比で抑えた価格設定、11店舗に拡大した直営店舗網、大型家電への参入検討、SIMフリー分割払いの普及促進と、どれもスマートフォン単体の話ではなく、エコシステム全体で日本市場に根を張ろうとする戦略の一環として位置づけられます。
3,000円台のRedmi Buds 6 Playを入口にXiaomiを体験してもらう「ファーストXiaomi」から、エアコン・冷蔵庫・洗濯機といった白物家電まで。このスケール感は、日本で展開する中国系スマートフォンメーカーとしては異例。日本でのシャオミ・ジャパンによる展開はまだ始まって数年。それでも人・車・家戦略の一端を感じられる発表会でした。
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