【TicWatch Pro 5】WearOS 3.5の利便性と心拍数、血中酸素飽和度測定、そして2層式ディスプレイで数日は持つ圧倒的なバッテリー。すべてが最高のTicWatch Pro 5 レビュー
以前に比べて社会的に健康な生活を送ることに対しての要求は高まっている今日このごろ。新型コロナの感染拡大時に在宅勤務が広がり、通勤という貴重な運動の機会さえもなくなり、過去にも増して運動不足になって、健康を損なってしまうということが増えているわけ。また、長寿命化が進む中で、QOL(Quolity Of Life)を維持するためにも、適度な運動と健康状況のモニタリングは需要です。
この文脈の中でも注目を集めているのがスマートウォッチ。昔は心拍数測定だけが健康管理面では可能だったものの、今では血中酸素飽和度はもちろん、ストレスの状況、心臓の健康状態までチェックできるように。運動の際にはVO2 MAX(最大酸素摂取量)の計測も可能で、運動状況やその効果まで測定できる製品が増えています。
今回は業界最高水準の運動・健康計測機能とWear OS 3.5の採用でLINEやSNSのメッセージ送受信を実現しながら、圧倒的な電池持ちを実現したMovboiの最新スマートウォッチ、TicWatch Pro 5をレビュー。現状発売されているスマートウォッチの中で、多機能さと電池持ち、そして価格の3点で最高の製品なのは間違いがない製品です。
※メーカーよりサンプルの提供を受けてレビューしています。
余計な装飾を無くしてシンプルなデザイン。見やすいディスプレイも魅力
まずはパッケージから。本モデルのパッケージは前モデルの時計型の正方形のデザインから変わって細長のデザインに。また、黒色を強調していた全モデルと比べると白色ベースの落ち着いた、シンプルなデザインに仕上がっています。
同梱品は本体の他に説明書と保証カード。説明書は日本語化されており、最低限の操作についてはこの説明書で確認することが可能です。ただ、実際にはわざわざ説明書を確認するような場面はなさそうです。
TicWatch Pro 5はディスプレイ部分に1.43インチのOLEDディスプレイを採用。解像度は466×466と非常に高く、小さい画面であっても十分な情報量を確保する事が可能です。明るく鮮やかなOLEDディスプレイのおかげで直射日光下でも見やすい画面を実現しているのも特徴です。また、後述するようにディスプレイはTN液晶との2層構造で消費電力の少ないTN液晶のお陰でバッテリーの長寿命化にも貢献しています、
背面には充電用の端子と健康データ(心拍数・血中酸素飽和度)の測定センサーを搭載。高精度な健康状態の監視が可能です。側面には大型のクラウン回転ボタンと、マルチファンクションキーを配置。ファンクションキー側が目立たないデザインなのもあって、パッと見の見た目がよりクラシックな時計に近づいた印象を感じます。
本体の重量は58g。前モデルのTicWatch Pro 3 Ultra GPSが70gだったことを考えればかなり軽量化に成功した印象。Amazfit GTR 4ですらバンド込で60gでしたので高性能でありながら軽量なスマートウォッチと言ってしまって問題なさそう。
ただ、装着している感想としては意外と重さは感じるかも。本体に厚みがあることと、手首に触れる面がAmazfit GTR 4に比べると少し狭く全体的に縦に太いデザインになっているからかもしれません。
ディスプレイ部分はベゼル部分がディスプレイよりも少し前に出ている感じの構造。このため、ちょっと時計を壁などに当ててしまっても直接ディスプレイに障害物が当たりづらいようになっているのも特徴かも。ベゼル部はギザギザになっており、傷も目立たないようになっているのも嬉しいポイントです。
背面の電源アダプターはTicWatch Pro 3シリーズと同じ端子を採用。このため、前モデルからの買い替えの場合は、追加購入していた充電ケーブルを利用することも可能。端子形状が特殊なこともあって、スタンド型の充電器は登場していませんが、高速で充電ができること(最速30分間で65%の充電が可能)もあり、テーブルの片隅などで入浴中に充電してしまえば邪魔になりません。
Wear OSの高機能さとスムーズな操作性、高度な健康管理機能を両立
TiWatch Pro 5のセットアップには、Movboiからリリースしている専用アプリ「Movboi Health」を利用。これまでのモデルで利用していた「Movboi」アプリとは異なるアプリを利用します。ただし、UIについては変更されておらずWearOS 3.5対応が既存のアプリでは両立できなかったのではないかと思われます。
このMobvoi HealthアプリはTicWatch Pro 5の利用において必須のアプリですが、現時点ではiOS版は未リリース。このためiOSユーザーはまだTicWatch Pro 5は利用できないので注意が必要です。
WearOS 5を採用したスマートウォッチが、これまでのWearOS 3採用製品と異なる点が、セットアップをある程度スマートフォン側で実施できること。Pixel Watchでもそうでしたが、母艦となるスマートウォッチ側で設定を変更できるというのは結構便利。
一時期のWearOSに比べて改善したと感じるのが、セットアップ中にインストールするアプリを選べること。必要なアプリは限られるものの、スマートフォンに比べれば画面の小さいTicWatch上ではなく、スマートフォン側で選択できるのは便利でした。
あとはウィザードに従って設定を進めていくことで利用準備は完了。バックグラウンドでTicWatch側では指定したアプリのダウンローダーが開始されていき、Wi-Fiの届く環境下であれば使っている間にアプリのインストールが完了します。
視認性抜群の2層式ディスプレイ。OLEDは鮮やかで、TN液晶は直射日光下でもハッキリ描写が可能
TicWatch Pro 5の一番の特徴はこの画面。一つのスマートウォッチの画面にフルカラーで精細な描写が可能な1.43インチOLED(466×466)のディスプレイと、かつてのデジタルウォッチと同じようなTN液晶を2層構造で採用したこと。普段は消費電力の少ないTN液晶を表示して時刻を簡単に確認できるようにし、スマートフォン側に通知が来たときにはすぐに情報量の多いOLEDに移行できるというもの。
これまでもTicWatchの特徴的な仕様として注目されていましたが、本モデルでもこの2層式ディスプレイが大きく活躍しています。バッテリーの持ち方が圧倒的で、WearOS搭載のスマートウォッチでありながら、バッテリー残量を気にする必要がないというのは圧倒的でした。
まずはOLEDディスプレイ側の画面から。文字盤の画面から左右にスライドしていくことでカルーセルという各機能のウィジットの表示画面に以降可能。カレンダーの予定を確認したり、天気予報を分かりやすいアイコンとともに確認することが可能です。
また、スマートフォン側で音楽を再生している際には、その音楽の操作を行うことも可能。本機の中にSpotifyやYouTube Musicをインストールしてストリーミング再生を本機から行うことも可能ですが、基本的にスマートフォンにBluetoothイヤホンを接続しているため、スマートフォン側を操作できる方が個人的には便利でした。
スマートフォンの通知に関しては、画面を下から上にスワイプすることで表示可能。各アプリの名称・アイコンとその内容が表示され、スマートフォンと同じようにタップすることで通知の全文を確認できるようになっています。利用していて常に感じるのが、画面遷移が一切カクつかないこと。Snapdragon W5+ Gen1のパワフルさで、スムーズな動作を実現しています。
TicWatch Pro 5の採用するWearOS 3.5にはLINEのWearOS版も配信。これまでのWearOS採用のスマートウォッチでも、通知に対してメッセージを作成して返信する「クイック返信機能」自体は備えていましたが、メッセージの履歴を直接確認することはできませんでした。
WearOS版LINEアプリでは、直接メッセージの履歴を確認可能に。スマートフォンアプリと同じように過去のメッセージを確認したり、他の人の分を見て直接メッセージを送ることが可能です。
メッセージを送信する際にもAmazfitなどで搭載している予め登録した定型文を送る簡易返信ではなく、キーボード(Gboard)や、音声入力を利用することが可能。長文を返す、というのは難しいものの、ちょっとしたことを伝える程度であればTicWatch Pro 5上で完結させることができます。
もう一つ特徴的なのが、モバイル決済にTicWatch Pro 5単体で対応したこと。タッチ決済対応の一部のクレジット/デビットカード(現時点ではエポス・SONYバンクWallet等)をTicWatch Pro 5に登録し、NFCを利用したタッチ決済を利用することができます。ただし、本機で対応するのはNFCのタッチ決済までで、FeliCaを利用するモバイルSuicaには非対応です。
実際に近所のローソンでクレジットカード決済を利用。失敗してしまうこともあるものの、スマートフォンを出さずに決済できるのは利便性が高く感じます。ただし、どのカードで決済をするのか、というのを画面上で選択し、画面ロックを解除する必要があり、スマートフォンのおサイフケータイで決済したほうが早い気もしてしまいました。複数のカードを登録できるからこそ、ではあるものの、日常決済を移行できるかと言われたら微妙です。
24時間健康状態を計測。心臓の健康状態の確認モードも登場し、より健康管理が強力に
TicWatch Pro 5では、従前のモデルと比較してさらに計測項目の増えた健康監視機能を搭載。今ではすでに当たり前になった心拍数や、血中酸素飽和度(SpO2)の常時測定に加え、ストレスレベル、運動時にはVO2 Max(最大酸素摂取量)の計測にも対応しました。
計測した結果は、自動的にMovboi Healthアプリに収集されていき、位置画面上で睡眠計測、心拍数、血中酸素飽和度、ストレス、VO2 MAXの状況を確認することができます。データは必要に応じてGoogle Fitに連携させることが可能で、他のスマートウォッチ等から連携させたデータと組み合わせればデータの連続性を確保できます。
心拍数、血中酸素飽和度、VO2 Maxの記録は、アプリ上でグラフ化して確認することも可能。日時での推移だけでなく週単位・月単位で確認して全体的な傾向を確認することも可能です。心拍数計測では期外収縮、頻脈、徐脈なども検知することができるため、過去のモデルに比べて異常に気が付きやすいのも特徴と言えます。
他社(Amazfit)などの製品と比べると、血中酸素飽和度測定については結構計測条件がシビアな印象。就寝中は計測できていることが多いものの、昼間はオフィスで仕事をしてそんなに動いていない状態でも計測できていないことが多く、この計測能力には改善も必要かと。
※本製品の健康管理機能は、医療用のものではなくあくまでも参考情報を集めることができるものです。
個人的に舌を巻いたのが、睡眠計測のデータの詳細さ。睡眠時間における深い睡眠、レム睡眠の時間を示してくれるのは他の製品とも変わりませんが、睡眠中の血中酸素飽和度や呼吸数、さらには皮膚の表面温度まで計測。そして、入眠時間・起床時間の規則性まで確認してアドバイスを表示してくれます。
なお、睡眠計測はもちろん心拍数・血中酸素濃度といった各種健康監視機能はOLEDディスプレイ+WearOSでの動作を中心にした「スマートモード」だけでなく、TNディスプレイのみで稼働し電池持ちを抑える「エッセンシャルモード」でも動作。指定した時間は常にエッセンシャルモードで動作する、といった設定にすることもでき、夜間の睡眠計測をしつつも消費電力を抑えて計測し続けるといった運用が可能です。
週次でもこののように睡眠の長さはもちろん、その規則性、就寝時の心拍数、血中酸素飽和度、皮膚温度の推移まですべてグラフ化。かなり詳細にデータをまとめてくれるため、ふとした時に確認すると傾向がわかって良いかも。体調が悪いときに自身の習慣を確認して、原因と対策をつかめるはず。
運動計測機能も十分。運動中の心拍数やルートをビジュアライズして確認
運動計測モードでは、100種類以上の運動計測モードからその運動にあったデータを計測・収集して蓄積していくことが可能。運動中はTN液晶とOLEDの両方での情報の表示に対応しており、TN側のほうが直射日光下での視認性や、一発で運動時間、歩数、心拍数を確認できて良い感じ。一昔前のスポーツウオッチとして使えるわけです。
このTN液晶のバックライトについては、心拍数によって色を変えられるのも特徴的。ランニング中などに手首をディスプレイを見るような形で倒すとバックライトが点灯し、小さい心拍数表示を確認せずともバックライトの色だけで判別することが可能です。
運動中は常時内臓のGPSが働き、日本の準天頂衛星システムである「みちびき」も利用し高精度な位置測定を実現。また、気圧センサーも搭載しており、例えば登山の際などには気圧を元に高度を計測することも可能。(上記画像では、実際の高度は1,700mほどのため、400mほどズレてしまっていますが…)
ランニングを計測した結果を確認。運動時間や走った距離、平均ペースと言った基本情報はもちろん、心拍数の推移やペース、歩数、歩幅もグラフ化。毎kmごとのラップレコードも自動的に計算をしており、ランニング中どこでペースが落ちたのかも簡単に確認できるため、ランナーの方が欲しい情報をすべて記録・管理することができます。
ダイエッターの方にとっては、消費カロリーを各運動で計測してくれるのも魅力的。各運動で消費したカロリーはMovboi Healthアプリで蓄積していき、毎日、毎週の単位でどれだけカロリーを消費したかもひと目で確認することができます。
乗馬についてはMovboiの考えではGPS記録はしない(AmazfitはGPSが作動する)らしく、運動時間、心拍数から消費カロリーを計算するだけでした。屋外スポーツはすべてGPSで記録すれば良いようにも感じますが、ここは考え方の違いかもしれません。
スマートフォンアプリからでも詳細な設定が可能になり、メンテナンス性も向上
セットアップ時にもコメントしたように、一時期のWearOSスマートウォッチは設定やアプリのインストールといったメンテナンスについて、そのほとんどをスマートウォッチ上で行う必要がありました。ただ、この場合スマートフォンと比べたら小さい画面でアプリの検索を行う必要があり、決して便利とは言えませんでした。
TicWatch Pro 5も採用するWearOS 3.5では設定メニューの多くの項目をスマートフォンアプリ側から可能にしたり、スマートフォンのGoogle PlayからTicWatchにインストールするアプリを検索してインストールすることが可能になっています。
一部の設定項目についてはTicWatch上から変更する必要がありますが、設定画面は自然な日本語で記述されているため不便はありません。また、本体右側面のクラウン回転ボタンを利用してスムーズに選択したい設定項目を選んでいくこともできました。
本体の文字盤のデザインについては、Mobvoi Healthアプリ上から変更可能。文字盤を多く取り扱うTimeShowがMovboi Healthアプリに統合されており、かなり多くの種類から文字盤を選んでインストールすることが可能。有料のものが多いようにも見えますが、無料の文字盤も多くあるため十分カスタマイズすることができます。
また、デジタル型の文字盤であれば、文字盤内に表示する情報についてもカスタマイズが可能。欲しい情報を簡単に確認できるように設定できます。文字盤画面を左右にスワイプすることで表示する「タイル」も表示有無や順番もここで設定できます。
最後に忘れずに触れておきたいのが、TicWatch Pro 5の電池持ち。24時間の心拍数測定(リアルタイムモード)・血中酸素濃度測定をONにした状態で、48時間利用した状態が上の通り。この間にランニングの計測や睡眠計測も2回利用し、WearOSとしての通知なども確認し続けてきましたが47%の残量がある状態。
それなりにハードに利用した状態で48時間でのバッテリー使用量が53%という結果は、WearOS搭載のスマートウォッチとしては衝撃的なレベルかと。この状態から100%まで充電しようとしたら30分ほどで満充電できてしまうので、2,3日の旅行程度では充電器の持ち歩きは不要です。
さすがに独自OS搭載のAmazfit GTR 4の48時間で29%(充電完了から、残量の確認まで同時刻、かつ、同じ運動計測を実施)と比べれば電池消費量は多いものの、24時間すら持たない高機能スマートウォッチがあることを考えたら十分すぎました。
計測したいものをすべて計測。そして、スマートさとバッテリー持ちを実現。最強のWearOS機
今回レビューしたTicWatch Pro 5は、最新のWearOS 3.5にSnapdragon W5+ Gen1を採用したことでパワフル、かつ、高機能なスマートウォッチとしての利便性と、心拍数、血中酸素飽和度、心臓の状態や、睡眠計測といった高度な健康管理、そしてTN液晶とOLEDの2層式ディスプレイを組み合わせて48時間でも50%強の電池消費という圧倒的なバッテリー持ちのすべてで突出した性能を持った製品でした。
TicWatch Pro 5は現在Amazonを始めとした通販サイトで49,999円で販売中。WearOS採用のスマートウォッチの中では高すぎもない価格設定で、実用性の高いスマートウォッチを求めている方には最高の選択肢と言えるはず。ぜひ、TicWatch Pro 5でWearOSの進化を体感してください。