6月9日。香港で中国返還後最大級と言えるデモが行われた。香港で拘束した容疑者を香港本土に引き渡すことのできる「逃亡犯条例」に対して反対するデモで、主催者発表103万人、警察発表でも24万人という規模になった。今日12日も大規模なデモが開催中だ。中国の企業との付き合いもそれなりにあり、また、中国人の友人もいくばくかはいる中華ガジェット専門ブログの管理人として思うことを書いておきたい。
【あーる香港・深圳記Part1】これぞ香港&深圳。初一人海外旅行ってきました。観光編
【中国夜行列車の旅】一泊2日の土日旅行。遥か異国の中国、ハルビン、天津をZ207次・夜行列車で回る旅。
中国本土の豊かさの影で、本土化する香港
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深圳は20年弱で香港を追い越すレベルの経済発展を遂げた |
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広大な土地、強力な政治体制で中国は急速に発展する |
中華人民共和国の成立から70年。1978年に鄧小平によって始まった改革開放政策以来、中国は共産党一等体制の矛盾を抱えながら発展。世界の工場と言われるまでに工業化を推し進め、今では広東省の深圳市は世界で最も最先端な都市の一つに数えられるほどになった。
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香港の中心部。中環 |
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香港には世界中から観光客が集まる |
強大化した中国は、最終的に英国の植民地であり、アジアにおける東京に次ぐ金融都市としての地位を確立していた香港の返還を97年に勝ち取る。英国の一部として英米法の法体系、自由な言論活動、経済活動が認められていた香港は、返還にあたっても今後50年間は当時の制度を維持する「一国二制度」を認められた。これが現在の中国の一部でありながら、中国本土と異なる自由が保証された香港の礎となったのだ。
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中国本土には軍隊の一部である武警も配置される |
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「打黒除悪」の掛け声のもと密告による通報を進める中国 |
一国二制度のもと、高度な自治権と自由を認められた香港であるが、中国本土の発展のなかでだんだんと「本国化」が進行。いつまで経っても行政長官の民選化は実現されず、終審法院には香港基本法の解釈権も認められなかった。経済的には中国企業の進出が進み、北京の顔色を窺う企業によって反共産的なメディアは広告収入が減る、というように徐々に徐々に香港から反共的なメディアが減ってきたのだ。
本土では外部へのインターネットアクセスを規制する金盾が構築され、自由な言論は認められず、加えて反共的な言動は当局にマークされることが横行。「打黒除悪」の掛け声のもと、ますます密告が進む。さらに全国のありとあらゆる場所に公安が配置、加えて人民解放軍の一部である武警も配備。民衆の情報をシャットアウトした上で、力でも押さえつける体制を築き上げた。
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中国の鉄道は実名制だ |
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顔認証の改札機。便利な半面である |
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各駅にはセキュリティチェックも |
中国本土の民衆に対しての、異常なまでの警戒感は旅行者でも感じる場面が多々。例えば旅行の際に長距離移動をするという場合、中国国鉄を使うわけだがその際のチケットはすべて実名制。我々日本人であればパスポートが必要で、中国人はIDカード必須。改札には顔認証のゲートも設置される厳重っぷりで、一度当局に目をつけられたら移動もままならないのが中国というわけ。
【中国夜行列車の旅】一泊2日の土日旅行。遥か異国の中国、ハルビン、天津をZ207次・夜行列車で回る旅。
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社会主義核心価値観が虚しい |
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独裁政治を突き詰めた先の国も |
今、香港では何が起きてるのか。一国二制度のもとの自由をそれでも維持してきた中、犯罪者を中国に引き渡す条例が可決されようとしている。表向きの理由は台湾での殺人事件に関して、香港と台湾間での犯罪者引き渡し条約がないこと。ただ、この条例によって中国政府側で恣意的に犯罪をでっち上げ、要求すれば北京にとって気に入らない者を英米法の司法体制の香港から、共産党による指導の下にある中国本土の司法制度に引きずり込めるのだ。
これに対して香港の学生を中心とした若者、それだけでなくビジネス層も反対の声を上げデモが起きているのが今の状態。この条例が通れば、香港の自由は骨抜きにされるといっても過言でなく、香港が自由である最後の砦が失われてしまうのだ。
自由な言論って素晴らしい。頑張れ、香港。
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民主化を成し遂げ、自由を掴んだ台湾 |
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自由経済による発展を遂げた台湾 |
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香港 |
私は香港も、中国も両方とも好きだ。ただ、日本という自由主義国家にいて自由に発言し、自由に行動することの素晴らしさも知っている。なにせ、私はこの香港での出来事について、中国の友人に知っているかどうか尋ねることも、どう思っているのか自由に聞くこともできないのだから。私が当局に目をつけられるだけなら、中国に行かなければいいだけで済むが、仮に私がWeChatで聞いたことで相手が拘束されたらー考えるだけで何もできなくなる。
Baiduで今回のデモに関してのニュースを検索してみると、衝撃的なほどに報道されておらず、あっても、ごく僅かな外交部の記者会見のみというレベルなのだ。本土の人間がこのデモのことも、条例改正のことも、知っているのかも、どう思っているのかも発言できない、どれだけ恐ろしいのか今記事を書きながら身震いしている。だから、香港は今のこの自由を失わないで欲しい。がんばれ、香港。
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