MINIX 深圳で未発表AI PCの中身を見てきた。Panther Lake/Gorgon Point/Jetson Thor、実機・ベンチマーク・内部構造まで
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【深圳訪問記】Panther Lake搭載180 TOPSの未発表機「MINIX EU738-AI ULTRA」とGorgon Pointの「MINIX ER947-AI」。前面モニタリングパネルから内部構造までMINIX深圳オフィスで徹底取材

MINIX 深圳で未発表AI PCの中身を見てきた。Panther Lake/Gorgon Point/Jetson Thor、実機・ベンチマーク・内部構造まで

当ブログでは多くの中国メーカーガジェットをご紹介してきており、最近ではINNOCNやKTCを始めとした中国のディスプレイメーカーをご紹介してきました。PC周りのガジェットとして個人的にも、そして当ブログの読者の方にとって気になる存在と思われるのが家に設置して利用するミニPC。当ブログでも以前は中華ファンレスミニPCなんかをレビューしていましたが、最近は持ち運びはXiaomiのRedmiBookを、自宅では自作PCをというようにすっかりミニPCからは離れてしまいました。

気がつくとミニPCは単純にノートPCレベルの性能をデスクトップで使えるようにしていたものから、これまでは大型のケースを利用したデスクトップPCでしか出来なかったようなハイエンドな作業やゲームができるレベルに進化。今回は2026年9月に深圳市南山区にあるMINIXのオフィスを訪ねました。MINIXは香港発のコンピューティングブランドで、日本では2026年5月にリンクスインターナショナルと国内総代理店契約を結んだばかり。

今回はIntelの新世代Panther Lakeを積む未発表機「MINIX EU738-AI ULTRA」、AMDの次世代APU Gorgon Pointを積む「MINIX ER947-AI」、そしてNVIDIA Jetson AGX Thorを搭載した生成AIワークステーション「MINIX T5000」を実際にMINIXのオフィスで見せてもらいました。

対応いただいたのはセールス責任者のTracy Lau氏、マーケティング担当のChris氏、そしてプロダクトマネージャーのHunter氏の3名。会社紹介からAI戦略、製品ラインナップまで約2時間かけて話を聞いています。展示機は電源を入れ、ベンチマークを走らせたり、蓋のネジを外してその中まで確認したりしてきました。本記事ではその内容を、未発表機の実機を含めてレポートします。

「産業用の信頼性とコンシューマの革新の融合」を掲げるMINIX。2009年の創業からAI PCへ

MINIXのプレゼン表紙スライド「The convergence of industrial reliability and consumer innovation」

最初に紹介されたのが「The convergence of industrial reliability and consumer innovation」というコーポレートスローガン。産業用機器の信頼性と、コンシューマ向け製品の新しさ。その2つが交わる場所に自分たちがいる、という定義です。日本ではミニPCのブランドとして知られていますが、MINIX社内の考えるMINIXの立ち位置というのはもう少し広い場所にあるようでした。

MINIXの沿革スライド。2009年の創業からAIコンピューティングまでの年表

MINIXの創業は2009年。その後2013年にAndroidメディアハブ、2014年に初のミニPCとなるNEOシリーズ、2022年に製品群とアクセサリーの拡大。そして2026年はAIコンピューティングとファンレス製品へ製品ラインナップを広げてきました。5つの区切りで整理された年表を見ると、「Androidボックスで名を上げた会社」という日本での印象が、すでに2世代も古いことが分かります。

親会社JWIPC(智微智能)の証券コードと時価総額を示すスライド

MINIXが他のミニPCブランドと異なるのが、親会社の存在。親会社であるJWIPC(智微智能)は深圳証券取引所に上場する企業(001339.SZ)で、時価総額は253.5億元。MINIXはここからR&Dと製造、部材調達の後ろ盾を得ているんだとか。Tracy Lau氏によると、技術的な疑問が出たときは同じビルの別フロアにいる開発者に直接聞きに行けるとのこと。蘇州にある国家級の研究開発拠点も使えるんだとか。

製造環境に関してもMINIXは製品品質を確保するための工夫があるとのこと。工場は10万平方フィートを超える施設で、月産5万台。自動化したSMTと組立ラインを通ったあと、全数が24時間のバーンインを含む機能試験を受けます。バーンインは電源を入れっぱなしにして初期不良をあぶり出す工程で、これを抜き取りではなく全数でやるとのこと。品質マネジメントのISO 9001に加えて、環境のISO 14001、労働安全衛生のISO 45001、情報セキュリティのISO/IEC 27001、そして有害物質のプロセス管理を見るIECQ QC080000を含めて多くの認証を取得しているとのことでした。

工場紹介映像に映るORT Laboratoryの恒温恒湿槽

工場紹介の映像には、ORT Laboratoryと名付けた区画も出てきました。Ongoing Reliability Testing、つまり継続信頼性試験の設備で、恒温恒湿槽がずらりと並ぶ部屋です。ミニPCの会社紹介で信頼性試験の設備まで見せるブランドは、そう多くなく、自動化した製造環境で高品質な製品を生産しているという矜持を見せてくれました。

クラウドに出せないデータをどこで処理するか。MINIXが語ったローカルAIの必然性

MINIXのAIコンピューティング戦略スライド。クラウド・エッジ・クライアントの3層構成

MINIXが現在注力しているのがAIコンピューティング領域。スライドではAIコンピューティングについて企業内の演算需要を3層に分けた図で説明してくれました。大規模な学習はクラウドとデータセンター、リアルタイムの推論はネットワークとエッジ、個人の生産性はクライアントのAI PC。最下段にはCPUからGPU、NPUへと処理を移すハイブリッド実行が置かれていました。

なぜ手元で動かす必要があるのか。その理由についてTracy Lau氏が挙げたのはコストと機密性の2つでした。顧客名や顧客ID、生年月日といった情報はクラウドに上げられない。法律事務所が扱う契約書も、学校が持つ生徒名と保護者の情報も同じ。文書の書式を生成AIに作らせるのは構わないが、そこに生徒の名前を紐づける作業は社内でやる。Tracy氏はその運用をハイブリッドなAIコンピューティングだと呼んでいました。

AMD・NVIDIA・Intelの製品ラインナップを映した画面を背に説明するMINIXのTracy Lau氏

このAIコンピューティングを支えるのが、製造工場における信頼性試験。AI PCは24時間365日動かす前提で、モデルの学習は10時間、長ければ数日に及ぶとのこと。「PCに自分の頭脳を学習させるのだから、壊れたら脳の一部を失うことになる」というのがTracy Lau氏の言い方でした。だから安い部材で価格を下げる競争には乗らない。親会社の産業用コンピュータで培った部材と設計を活かして価格競争よりも品質を追求する、というのがMINIXの現在の方針なんだとか。

当面の主戦場は法人。RAMもチップセットもストレージも値上がりが続き、個人にとってAIコンピューティングは手が出しにくいのも事実。一方で企業は、社員にAIを触らせるために3人から5人、あるいは10人規模のチームで共有するワークステーションを買っているんだとか。日本でも大企業はCopilotを全社導入できますが、中小企業や病院、学校は費用面で難しいところ。ローカルで完結する機械に需要があるというMINIXの見立ては、日本市場にもそのまま当てはまりそうです。

AI PCのフォームファクタを示すスライド。ワークステーション・オールインワン・ノート・ミニPC

AI PCといっても、MINIXが扱うのはミニPCだけではないとのこと。ワークステーション、オールインワン、ノートPC、ミニPCとボックス型の4つの形をそろえ、用途に合わせて選べるようにしているんだとか。受付に据えたオールインワンに照明や空調、施錠まで管理させるといった使い方の例も紹介してくれました。親会社にロボティクスの事業もあるため、フィジカルAIまで含めて広げていける、というのがMINIXの考えです。

前面のモニタリングパネルで負荷と電力を追える未発表機「MINIX EU738-AI ULTRA」

未発表機MINIX EU738-AI ULTRAの化粧箱。Core Ultra X7 358H、Overall 180 TOPS、Copilot+ PC

今回見せてもらった中で一番の目玉が、IntelのPanther Lake世代であるCore Ultra X7 358Hを積む未発表のミニワークステーション「MINIX EU738-AI ULTRA」。化粧箱にはOverall 180 TOPS、そしてCopilot+ PCの表記があります。当日紹介されたIntelシリーズのラインナップ表にもまだ載っておらず、公式ストアにも製品ページがない、まさに発表前の1台です。

MINIX EU738-AI ULTRAの化粧箱側面に並ぶ仕様アイコン

EU738-AI ULTRAの装備は、ミニPCというより小型ワークステーションと呼んだほうがしっくりくる内容。GPUはIntel Arc B390、メモリはLPDDR5X-8533MHz、無線はWi-Fi 7。8K@60Hz出力にThunderbolt 4を2系統、Windows Helloの指紋認証、Twin Turbo Intercoolerと名付けた冷却機構、そしてデジタルマイクを搭載していることも記載されています。本体にあえてマイクを搭載しているのは、AIのトレーニング時に音声入力を本体のみで実施できるようにしているからなんだとか。

起動時にパネルへアニメーションを表示し、側面のMINIXロゴが青く光るEU738-AI ULTRA

実機は縦置きのタワー型で、斜めに切り落とした面にカラー液晶を載せています。電源を入れると弧を2つ描いて笑顔になるアニメーションが流れ、側面のMINIXロゴとラインが青く光り出すという演出。前面は電源ボタン、3.5mmオーディオ、Thunderbolt 4のUSB-C、10GbpsのUSB-Aが2つ、SDカードスロット、リセットを1列に集めています。その下には上下の矢印アイコンが付いた緑のボタンと、Copilotのアイコンが刻まれた空きのスロット。矢印のボタンは動作モードの切り替え用で、空きのスロットには量産機でCopilotキーが入るとのこと。カメラのSDカードを直接挿して写真を編集するような使い方も想定しているんだとか。

MINIX EU738-AI ULTRAのモニタリングパネルとMINIX Info Panel

前面のパネルに出せる表示は、CPU・GPU・SYSTEM・NPUの数値を並べた詳細表示、弧が2つ並ぶ笑顔のアニメーション、そして大きな時計の3種類。Tracy Lau氏によると、学習中の内容を同僚に見られたくないときは簡易な表示にしておく、という使い分けを想定しているとのこと。遊び心もあってこのデザインにしているとも話してくれました。

この表示を制御するのが、MINIXが自社開発したMINIX Info Panel。SYSTEMタブにはマザーボード名としてElite EU738-AI ULTRA、OSはWindows 11 25H2、CPUはCore Ultra X7 358Hの16コア16スレッドと出ています。GPUはIntel Arc B390、メモリは63.5GB、ストレージは930GB。取材時はCPU温度52℃、ファンは1456回転で回っていました。

前面のボタンを押すと動作モードが切り替わり、画面の上部に通知が出ます。性能モードはオレンジ、バランスモードは緑と色で分かれ、ボタン自体のLEDも赤と緑で切り替わりました。静音モードを加えた3段階です。扱うLLMの規模に合わせて電力を絞れば、電気代と機体の寿命の両方を最適化できるとのことでした。。

消費電力を前面のパネルで追えるのも、EU738-AI ULTRAならではの特徴。アイドル時はCPU使用率9%で7.7W、ベンチマークを回している最中は32%で27.9Wでした。数日かけてモデルを学習させる用途なら、この数字の動きを横目で確認できるのは確かに便利そうです。なお取材した個体では、パネル側の温度表示とファン回転数が0のまま動いていませんでした。Info Panel側では52℃と1456回転を正しく出していたので、発表前の個体ならではの挙動なのかもしれません。

ネジを外して見えたMINIX EU738-AI ULTRAの拡張性

側面のパネルを外すと、中央に六角ハニカムのファンカバー、その脇にM.2スロットが並んでいます。装着済みのSSDはYMTC(長江存儲)が展開する、メーカー直系のコンシューマー向け(一般小売向け)純正ストレージブランドであるZHITAIのZHITAI Ti600 1TB。M.2_1がPCIe 5.0対応、M.2_2がPCIe 4.0対応で、PCIe 5.0のスロットにPCIe 4.0のSSDが載っている格好です。空きスロットが残っているので、ストレージは後から増設できます。

タスクマネージャーのメモリ表示。64GB LPDDR5X、8533MT/秒、基板直付け

一方でメモリは増設できません。タスクマネージャーの表示は64GBのLPDDR5X、速度は8533MT/秒で、スロットは8つすべて使用済み。外形規格の欄は「主板集成」、つまり基板への直付けになっています。SO-DIMMを挿すタイプのミニPCとは異なる点でもあり実際に購入する際には要注意です。

MINIX Elite EU738-AI ULTRAのGeekbench AIの結果。Single Precision 4069、Half Precision 36874、Quantized 55564

その場でGeekbench AIも走らせてもらいました。AI BackendにNPUを指定すると、タスクマネージャーのIntel NPUの欄が36%まで上がり、グラフが波を打ちます。結果はSingle Precisionが4069、Half Precisionが36874、Quantizedが55564。Hunter氏によると、これらは社内で機種を比べるために使っている参考値とのことで、確定した公称値ではないそうです。

背面で目を引くのがOCuLink。外部GPUをつないで演算性能を足せる端子外付けのGPUを利用してさらにAI処理能力を高めたいというときには利用できるとのこと。ただでさえ相当高性能なのにこれ以上高性能化が図れるというのは驚き。ほかにDisplayPort、HDMI、Thunderbolt 4、USB-Aが並びます。有線LANは2.5GBASE-Tと10GBASE-Tを1つずつ。付属のACアダプタは20V 12Aの240Wと大柄で、24時間動かす前提で余裕を持たせているようです。

MINIX EU738-AI ULTRAのスペック

項目内容
CPUIntel Core Ultra X7 358H(Panther Lake、16コア16スレッド)
GPUIntel Arc B390
AI性能Overall 180 TOPS
メモリ64GB LPDDR5X-8533MHz(基板直付け)
ストレージ1TB M.2 NVMe SSD(M.2_1はPCIe 5.0、M.2_2はPCIe 4.0、空きスロットあり)
有線LAN10GBASE-T×1、2.5GBASE-T×1
インターフェースThunderbolt 4×2、OCuLink、HDMI、DisplayPort、USB-A 10Gbps、SDカードスロット
その他前面モニタリングパネル、指紋センサー、デジタルマイク、Twin Turbo Intercooler
電源20V 12A(240W)ACアダプタ
OSWindows 11 Pro(25H2)

スペックは化粧箱の表記と、実機で動いていたMINIX Info Panelの表示から。未発表機のため公式の製品ページはまだありません。

AMDの次世代APU「Gorgon Point」を積む未発表機「MINIX ER947-AI」

未発表機MINIX ER947-AIの化粧箱。Gorgon Point世代のRyzen AI 9 HX 470

もう1台の未発表機が、AMDの次世代APUであるGorgon Point世代のRyzen AI 9 HX 470を積む「MINIX ER947-AI」。化粧箱には「Next-Generation Gorgon Point AI MINI PC」の表記があります。こちらも当日紹介されたAMDシリーズのラインナップ表には載っておらず、EU738-AI ULTRAと同じく発表前の1台でした。

天面はスリットのないフラットな黒で、MINIXのロゴだけが入るシンプルなデザイン。前面にはリセット、40GbpsのUSB-C、10GbpsのUSB-Aが2つ、3.5mmオーディオ、リング状に光る電源ボタンが並びます。左端にはCopilotのアイコンが入った丸いボタンが独立して付いていました。

PSEマークが入ったMINIX ER947-AIの底面ラベル

ER947-AIで驚いたのが底面のラベル。型番のElite ER947-AI、Ryzen AI 9 HX 470、32GB RAMと1TB SSD、Windows 11 Proという表記の並びに、PSEマークが入っていました。まだ正式発表もしていない機種の実機に、日本向けの認証表示がすでに載っており日本発売も期待できる製品でした。

構造も確認させてもらいました。マグネットで留まるカバーは手で引っ張るだけで外れ、その下の底板は手回しできるネジで留まっており工具レスで開けられるようになっています。中央にファン、四隅にVESAマウント用のガイド。Tracy Lau氏いわく、AI PCは使ううちにSSDやRAMを必ず増設したくなるので、開けやすくしてあるとのこと。

現行モデルMINIX ER937-AIの底面ラベル。Ryzen AI 9 HX 370

ER947-AIの立ち位置が分かりやすいのが、すでに販売している現行モデル「MINIX ER937-AI」との比較。ER937-AIはRyzen AI 9 HX 370を積み、CPUとNPUを合わせて80 TOPS、GPUはRadeon 890M。メモリはDDR5-5600のSO-DIMMで最大96GBまで載り、こちらは自分で増設できます。有線LANは2.5GBASE-Tを2系統。未発表のER947-AIは、ここからチップ世代をひとつ進めたモデルということになりそうです。

MINIX ER937-AIのスペック

項目内容
CPUAMD Ryzen AI 9 HX 370
GPUAMD Radeon 890M(2900MHz)
AI性能合計80 TOPS
メモリ32GB DDR5-5600MHz(最大96GB)
ストレージ1TB PCIe 4.0 NVMe SSD(最大8TB)
有線LAN2.5GBASE-T×2
無線Wi-Fi 7+Bluetooth 5.4
映像出力HDMI 2.1、DisplayPort 2.0、USB-C 4.0×2で4画面8K@60Hz
認証Windows Hello指紋認証
OSWindows 11 Pro

7Bから70BのLLMを手元で回す「MINIX T4000 / T5000」

NVIDIA Jetson AGX Thorを搭載するMINIX T4000/T5000の仕様スライド

今回見た中で最も大きな演算性能を持つのが、NVIDIA Jetson AGX Thorモジュールを載せた生成AIワークステーション「MINIX T4000」と「MINIX T5000」。アーキテクチャはBlackwellで、AI性能はT4000が1200、T5000が最大2070のSparse FP4 TFLOPS。GPUは1,536コアから2,560コア、CPUは12コアまたは14コアのArm Neoverse-V3AE、メモリは最大128GBのLPDDR5Xで帯域は273GB/sに達します。7Bから70BのLLMをローカルで推論できる、というのがMINIXの位置づけです。

実機はシルバーの筐体に六角ハニカムの大きな開口を持ち、緑のラインが入ります。サイズは139.3×131×76.8mm、重さは1,420g。冷却はEU738-AI ULTRAと同じTwin Turbo Intercoolerを搭載します。背面は10GBASE-Tを2系統、USB-Aが4つ、HDMI 2.1が2つ、そしてDC入力。電源は19V、最大180Wです。OSはUbuntu 24.04 LTSにNVIDIA JetPackを組み合わせたもので、CUDAやTensorRT、NIMをそのまま動作させることが可能です。255段階のプログラマブルウォッチドッグやESDイミュニティのグレード4といった、産業用機器らしい項目も仕様に並んでいました。

MINIX T5000の底面ラベル。製造者は深圳市智微智能科技股份有限公司

底面のラベルに記載された製品名は「AIBOX」、型番はW638-B。製造者は親会社の深圳市智微智能科技股份有限公司です。会社紹介で話していた、親会社が製造を担うという体制が、実際の製品にもそのまま表れていました。

MINIX T4000/T5000のスライドを前に説明するTracy Lau氏

T5000の用途としてTracy Lau氏が挙げたのが、ロボットの「脳」。従来なら大きな筐体が必要だった演算を、この大きさで持ち運べるのが強みなんだとか。ロボットアームに接続して動作を制御するような、フィジカルAIの現場を想定しているとのこと。価格は1台7,000ドルから8,000ドルほどになるそうです。

では実際にLLMを動かすと、どのくらいの速度が出るのか。参考になるのが、香港のPCメディアHKEPCが公開したT5000の実測レビューです。OllamaとOpen WebUIを組み合わせた環境では、GPT-OSS-20Bが毎秒約42〜43トークンで応答し、メモリの使用量は約23GB。総パラメータ数1170億のGPT-OSS-120Bでも毎秒約30〜31トークンで動き、メモリを約88GB使っていたとのこと。MINIXが目安に掲げる7Bから70Bを超える規模のモデルまで、128GBのメモリがしっかり活きてくる結果のようでした。

同じレビューでは、メモリ帯域が同じ273GB/sのDGX Spark(GB10)搭載機とも比べています。プロンプトを読み込む処理は平均で約5割遅い一方、応答を生成する速度の差は約1割にとどまったとのこと。HKEPCは前者の差について、Tensorコアの数がGB10の半分であることの表れだと分析していました。香港での販売価格はT4000がHK$39,500、T5000がHK$57,100。先ほどの7,000〜8,000ドルという価格は、T5000の水準ということになります。

HKE PC:128GB RAM !! 性能提升 7.5 倍 MINIX T5000 AI 迷你工作站實測

MINIX T4000 / T5000のスペック

項目T4000T5000
モジュールNVIDIA Jetson AGX ThorNVIDIA Jetson AGX Thor
AI性能1200 Sparse FP4 TFLOPS最大2070 Sparse FP4 TFLOPS
GPU1,536コア Blackwell2,560コア Blackwell
CPU12コア Arm Neoverse-V3AE14コア Arm Neoverse-V3AE
メモリ64GB LPDDR5X(273GB/s)128GB LPDDR5X(273GB/s)
ストレージ1TB PCIe 4.0 NVMe(最大4TB)1TB PCIe 4.0 NVMe(最大4TB)
有線LAN10GBASE-T×210GBASE-T×2
電源19V DC(最大180W)19V DC(最大180W)
OSUbuntu 24.04 LTS(NVIDIA JetPack)Ubuntu 24.04 LTS(NVIDIA JetPack)
サイズ・重量139.3×131×76.8mm/1420g139.3×131×76.8mm/1420g

スマートフォンより小さいAI PCから充電器まで。ミニPCで終わらないMINIXのエコシステム

10月発売予定のPocket AI PCのスライド。スマートフォンとのサイズ比較

今回見た中でいちばん小さかったのが、10月発売予定というポケットサイズのAI PC。資料での名称は「Pocket AI PC Intel N304」で、「サイズはSamsung Galaxy S26 Ultraと同程度」という注釈がありました。手のひらに載る筐体の背面に、ロックスロット、USB-Cを2つ、有線LAN、HDMI、USB-Aが並びます。スマートフォンより小さい本体で、有線LANとHDMIを両立させているのは面白いところ。

完全ファンレスの0dBシリーズのスライド。Z100-0dB、Z150-0dB、Z350-0dB

当ブログで以前レビューしていたようなファンレスのミニPCにあたるのが、0dBシリーズ。Z100-0dBがIntel N100、Z150-0dBがN150、Z350-0dBがCore i3-N350を搭載します。筐体全体をヒートシンクにしてファンを持たない構成で、動作音がゼロであることを製品名に冠しています。オフィスや図書館、ホームシアターのように、音が邪魔になる場所を想定したラインナップなんだとか。

放熱フィンを備えたファンレスミニPC MINIX Z300-0dB

実機で触れたのはZ300-0dB。天面から側面にかけて放熱フィンが立ち、手に取ると金属の塊という手触りです。天面には放熱で熱くなることを知らせるシールも貼ってありました。搭載するのはAlder Lake-NのIntel N300で、HDMIを2つ使った4K@60Hzのデュアル表示に対応します。前面にmicroSDカードスロット、USB-C、USB-Aが2つ、3.5mmオーディオ。背面はDC入力、USB-Aが2つ、有線LAN、HDMIが2つという構成でした。ファンを積まないぶん厚みのある筐体ですが、持ってみると想像より軽く収まっています。

ショーケースに並ぶMINIXのGaN充電器とトラベルアダプタ

そして棚一面を占めていたのが充電器。壁挿しのGaN充電器は30WのP30から165WのP165まで並んでいました。上位のP3 ProとP140 Proは出力や温度、充電時間を表示する画面を備えているのも特徴。日本のAmazonで販売されている製品は少ないもののかなり多種多様な製品を展開していました。

MINIXのトラベルアダプタTP45〜TP170の比較表

万国対応のトラベルアダプタはTP45からTP170までの5モデル。45W、85W、100W、140W、170Wと刻んでいて、100WのTP100Cだけはケーブルが付属します。注意したいのは、いちばん小さいTP45が英国のコンセントに対応しないこと。ほかの4モデルは180か国以上をカバーするので、英国に行く可能性があるならTP85から上を選ぶのが安心です。

MINIXのワイヤレスディスプレイ製品群。C・B・Hの3系統

ワイヤレスディスプレイアダプターも3系統を用意しているとのこと。USB-C直結のC1とC1 Plus、HDMI向けのH1とH4K、そして会議室や店舗を想定したB14とB21。B14は1台の送信機から4台のディスプレイへ同時に映像を飛ばし、B21は2台のPCを1画面で切り替えられます。伝送距離はいずれも見通し50m。

ショーケースにはこのほか、ポータブルモニターのSF16T、CarPlayアダプタ、KVMスイッチ、SSDエンクロージャー、そして8K再生に対応するAndroidメディアハブのU8K-ULTRAも並んでいました。「他のミニPCブランドはミニPCの外へ広がらない。うちは広げるので、扱う側も売れる幅が増える」というのがTracy Lau氏の説明。ミニPCだけで終わらない製品の幅広さが、MINIXの強みになっているようです。

日本での窓口はリンクスインターナショナル。実機に触れる最初の機会は10月のJapan IT Week

MINIXのサポート体制のスライド。2年保証と専任カスタマーサービス

日本での窓口となるのがリンクスインターナショナル。2026年5月に国内での総代理店契約を結び、現在の正規モデルはRyzen AI Max+ 395を積むMINIX ER939-AIとMINIX ER939-AI Proの2機種が中心です。直販価格はER939-AIが549,800円、ER939-AI Proが698,000円(いずれも税込)。サポート面では、MINIXとして2年保証と在庫に余裕を持たせた出荷を掲げているとのことでした。ただしこれはMINIXのグローバルでの方針で、リンクスインターナショナルが扱う国内正規品のER939-AIとER939-AI Proの保証は1年です。

MINIX公式フォーラムに寄せられたユーザーの投稿

サポートの実際が見えたのが、公式フォーラムの画面。紹介された香港の店にZ97を買いに行ったらNR774も買ってしまった、WindowsもLinuxも各種バージョンを入れたが問題なく動いた、というユーザーの報告が寄せられていました。手元にはX35-i Max、U8K Ultra、Z97、NR774が揃ったとのこと。担当者が1対1でやり取りしている様子が、そのまま残っていました。

日本でMINIXの新製品に触れられそうなのが、10月のJapan IT Week秋。10月21日から23日まで幕張メッセで開催され、リンクスインターナショナルと共同でホール2のブース(A1-31)に出展する予定とのこと。今回見せてもらった新しいモデルも持ち込むと話していたので、国内で実機に触れられる最初のチャンスになりそうです。

MINIXのプレゼン締めのスライド「Simplify Life with MINIX.」

2時間の取材で繰り返し語られたのは、産業用の信頼性、Intel・AMD・NVIDIAの3社すべてを扱える調達力、そしてミニPCで終わらないエコシステムという3点でした。日本国内では深圳発のミニPCブランドがいくつも並んでいますが、そのなかでMINIXがどこに立っているのかは、この3つで説明が付きそうです。Androidメディアプレーヤーで名を上げたブランドが、ファンレスの静音機からJetson Thorのワークステーションまでを1つの棚に並べるところまで来ていました。

なかでも、未発表のER947-AIの底面にすでにPSEマークが入っていたのは強く印象に残っています。日本で売る前提で準備が進んでいることが、実機の裏側に表れていました。すっかりミニPCから離れていた身としても、手元でLLMを動かせるワークステーションがこの大きさに収まっているのを見ると、久しぶりにミニPCを自宅に置いてみたくなる取材でした。10月のJapan IT Weekでどこまで国内に持ち込まれるのか。手元でLLMを動かす環境を探している方にとって、追いかける価値のあるブランドです。

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銀行をやめて人材系のHRテックらしいメガベンチャーにいたかと思えば、今はSIerで企画とかしています