ワイヤレスイヤホンの領域でいえば、SONYのフラグシップモデルであるWF-1000XM5が発売されるなど、高機能、かつ高級なモデルが世間を騒がせています。ただ、忘れてはいけないのが有線のイヤホン。当ブログでも多くのモデルをレビューしてきたオーディオメーカー、1MOREから久々の有線モデル、1MORE P50が発売されたのでご紹介。
1MOREP50は1MOREから発売されたペンタドライバー(5ドライバ)のイヤホン。ダイヤモンド・ライク・カーボンドライバー(DLC)×1とBAドライバ(平面振動板)×4を搭載し、ダイナミック型による低音の豊かなサウンドと、BA型による伸びやかな高音域によって音楽を忠実に再現できるという製品。
同じようなダイナミック型+BA型×4の構成のイヤホンだと、5年前にレビューしたLZ A5なども近いかと。当時はペンタドライバーの製品はほとんど市場に出回っていませんでしたが、いまでは1MORE P50を始め多くの製品を見かけるようになり技術の進化も感じます。1MORE P50は23,999円で販売中です。
※本製品はメーカーの1MOREより製品提供を受けてレビューしています
5ドライバーでも耳に収まる超小型な構成。超軽量なドライバー部も魅力
パッケージはこれまでの1MOREのヘッドフォンなどに近いデザインでありつつ、他社の高級有線イヤホンと同じようにイヤホンのデザインを大きくあしらった感じ。扉を開けるような形のパッケージで、内側には本体が鎮座するほか、1MORE P50の特徴をスケッチ風にしたイラストが掲載。1MOREのこだわりが伺えます。
本体を取り出すと他のアクセサリーの入っているボックスが出現。同梱品は、イヤホン+ケーブルのほかに、USB Type-C to 3.5mmステレオミニのアダプター、イヤーチップ、キャリングポーチ、説明書が付属。
同梱品の中で気になったのがイヤーチップ。大きさは14.3mm/12.3mm/11.0mm/10.6mmの通常にイヤーチップと、12.8mm/12.0mm/11.0mmのフォームタイプで元々ついているものも含めて合計8種類。他のイヤホンで耳孔が合わないという場合でも安心して利用できます。
実際の装着感については後述しますが、付属するイヤーチップは他の一般的なものに比べてかなり柔らかい印象。このため、長時間つけていても耳が痛くなりにくいのがポイント。また、フォームチップでなくても耳にピッタリはまってくれるため、本機のポイントでもある-28dBの高い遮音性を実現できます。
イヤホン本体とケーブルの接続部にはMMCX端子を採用。必要に応じてバランス対応のケーブルにリケーブルをしたり、FiiO UTWS5のようなMMCXをBluetooth化するアダプターを利用することが可能。
付属しているケーブルも銀メッキ無酸素銅ケーブルで音質面では十分な性能を確保。防弾シルクテンシルファイバーを皮膜に採用したことで、ケーブル自体も高い強度と耐久性を確保しつつ、タッチノイズを軽減しています。
ケーブル部にはMEMSマイクを内蔵。クリアな音質での通話を可能としています。また、マルチファンクションキーを搭載しておりボタンを押すだけで音楽の再生/一時停止や、曲送り/戻しにも対応しているのも嬉しいポイントです。
ペンタドライバーでありながらハウジング部は小型サイズを実現。イヤホン本体の重量はあわせて21gと軽量で、耳にかけていても疲れないような仕上がりになっています。ハウジング部はアルミニウム合金部材を採用し、宇宙の深さをイメージした構造も合わせてデザインも魅力的でした。
装着感は柔らかいイヤーチップと小ぶりなハウジング部のおかげもあり、かなり快適。どうしても大型化してしまうワイヤレスイヤホンに比べ、耳にすっぽり収まってくれ、圧迫感も少ないことから長時間つけていても気にならないのが魅力的。
ただ、少し気になったのが柔らかいイヤーチップ。この柔らかさのおかげで長時間の装着感が向上しているものの、あまりにも柔らかすぎるため耳に入れる際には、耳たぶを引っ張ってイヤーチップが潰れないように注意が必要。うまくはまると遮音性も高く最高なのですが、失敗すると遮音性は低く、さらに低音がうまく再生できなくなってしまいます。好みによってはコンプライシリーズを利用しても良いかもしれません。
有線だからこそ楽しめる音を、コンパクトに実現。自然な低音域が魅力
付属しているUSB Type-C to 3.5mmアダプターを利用してスマートフォンを接続しても、専用のDAPを利用しても楽しめるかと。変換アダプターには小型DACであるCX31993を採用しており、スマートフォンのオンボードのDACに比べれば高音質を実現できるとか。ただ、せっかくであればパワーのあるDAPで楽しみたいところ。
今回は1MORE P50の音質を検証すべくFiiO X3 2ndに本機を有線接続して、手元の音源を用いてチェック。本機は32Ωと比較的インピーダンスは高く、一定のパワーのあるDAPを利用するほうがおすすめ。(宣伝文とは異なりますが)先に総括してしまうと、とにかく癖のなく、そして、解像感の高いサウンドが個人的には好きになりました。また、音場表現も良くアコースティックな楽曲でも、打ち込み中心のサウンドでも楽しめる音作りと言えます。
Get Lucky – Daft Punk(88.2Khz/24bit)
グラミー賞最優秀レコード賞を受賞し、言わずとしれた名曲のGet Lucky。その録音のレベルなども含めてリファレンス音源としている方もいらっしゃるはず。当ブログでも、他のイヤホン・ヘッドフォンのレビューの際に必ずと言って良いほどリファレンスとして利用しています。
正直なところ聴き出して最初の一音目から、普段利用しているワイヤレスイヤホンとの圧倒的な違いを感じ「勝負あり」という感じ。イントロは、ギター、ドラムス、ピアノと分かりやすい楽器はもちろん、アクセントを加えているベースラインを分厚く、でも、邪魔にならない程よい厚みで表現。
ボーカルが入ってからは、ボーカルに入る小さなリバーブもバッチリ再生。コーラス部ではそれぞれの声を確実に分離し、複数人が別々の声色で歌っているのを自然に聴かせてきます。中盤徐々にコーラス、手拍子、ベースと楽器を増やしていく様子も、変わらない解像感で再生し続けられるのが、ペンタドライバーの最大の魅力かもしれません。
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格好いいな – aiko(96Khz/24bit)
Get Luckyもアコースティック系の多い楽曲でしたが、よりアコースティックな音の多い楽曲ということで、aikoの湿った夏の始まりから1曲目の「格好いいな」をチョイス。力強い和音のピアノがイントロのaikoにしては珍しい楽曲。最初から音数の多いこの曲の勢いとアコースティックな上品さをどう両立させるかが表現面では重要な楽曲です。
和音のピアノの導入部の表現は非常に秀逸。シングルドライバーのイヤホンやワイヤレス製品では雑に聞こえてしまう部分も、余すことなく表現してくれます。女性ボーカルの表現に関しても、甲高くなりすぎず前には出しつつインストからちょっと浮き上がる程度の表現にとどめてくれる感じ。1MORE P50がよくチューニングしたサウンドだなと感じるには十分な楽曲でした。
試聴していて感じましたが、アルバム2曲目の「ハナガサイタ」のドラムスの表現も秀逸でした。バス+αで表現するパートがあり、このバスドラムの表現は個人的にはかなり好み。ダイナミックドライバーで低音の表現を厚くしつつ、曇らせないで表現できているからこそ、という印象です。
ドラムス周りの表現で個人的に好みに感じたのは、マカロニえんぴつの「メレンゲ」もその一つ。楽曲の傾向がかぶるため見出し分けはしませんが、ハイハットの細かな鳴らし分けをキレよく表現しており、安価なイヤホンでよくあるシャリシャリハイハットにならず、上品に鳴らし分けしてくれています。
湿った夏の始まり [ aiko ]
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怪物 – YOASOBI(96Khz/24bit)
アコースティックサウンドだったり、バンドサウンドばかりを取り上げてしまったので、打ち込み主体のYOASOBIから怪物をチョイス。エフェクター越しのikuraのボーカルから入り、シンセサイザーと少しずつ音数が増えていき、一気にエレキギター、ベース、ピアノのサウンドが入る曲。打ち込みサウンドの場合、ベースラインもピアノもソリッドな音作りをしており、イヤホンでもぼやかさない表現が必要です。
1MORE P50のDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)ドライバーによって、低音の表現を担当するダイナミックドライバーの高い応答性能を確保。小刻みな低音部も確実に聞き分けられる表現を実現していました。YOASOBIの音作り的にikuraのボーカルが前に来すぎるきらいがあり、これは1MORE P50の音作りと合わせって余剰な感も。ただ、インスト部もボーカルに負けずに高い音場表現で聴こえてくるため不快に感じることはありません。
アルバムTHE BOOK 2の次の曲である「もしも命が描けたら」でも感じたのが1MORE P50の音場表現力の高さ。コーラスやインストを左右両端に振っている楽曲ですがこの表現が秀逸。イヤホンでこの表現力が確保できれば個人的には文句はありません。
THE BOOK 2
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遮音性の高さもありノイズキャンセリング非搭載のイヤホンでありながら、電車の中であっても静寂な環境を簡単に手に入れられます。実際に通勤時の電車などで1MORE P50をつけながら移動してみましたが、車内のアナウンスが辛うじて聴こえる程度の静寂さを実現。走行音に関しても、モーター音などの低音を大幅にカットしてくれます。
わざわざノイズキャンセリングイヤホンを購入するよりも圧倒的に簡単に静かな環境を手に入れられるのは本機の魅力。専用DAPなどを利用しておけば、ワイヤレスイヤホンのようにイヤホンと送信側の電池残量を気にする必要なく利用できるのも嬉しいポイントかもしれません。
どこにいても最高の音表現を手軽に。久々に有線イヤホン、良いかも
今回レビューした1MOREの有線イヤホン、1MORE P50。当ブログで有線型のイヤホンをレビューするのは低価格イヤホンのKEBAR KS1(2021年5月)ぶり、ハイエンドモデルだとLZ A5ぶりというかなり久々のハイエンドモデルのレビューとなりました。すっかりワイヤレスヘッドフォンやイヤホンに飼いならされてしまい、外出時に専用DAPに直接接続するということをしていませんでしたが、久々に有線で聴いてみるとその音表現の良さにすっかり虜になってしまいました。
ワイヤレスイヤホンではなかなかできないペンタドライバーによって、確かな音質を実現しアコースティックメインの楽曲も、打ち込み主体の楽曲であっても解像感と音場を表現しながら聴かせてくれる1MORE P50。最近はオーディオから離れてしまっていた、という方も久々に有線イヤホンを手にしてみると良いかも。23,000円という高すぎない価格設定もあって、ぜひ手元のラインナップに加えておきたい製品でした。
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