白沙湖の湖畔に並ぶ飾り鞍を付けた白いヤクと白い砂山
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【新疆ウイグルの旅②】白沙湖とカラクリ湖の絶景を楽しんだパミール高原ツアーと辺境通行証の取り方を徹底解説。カラコルム・ハイウェイを387km走破したパミール高原の旅・レポート

白沙湖の湖畔に並ぶ飾り鞍を付けた白いヤクと白い砂山

前回からお届けしている新疆ウイグル自治区の旅。前回の記事では、15日間の旅程と費用、上海での乗り継ぎ、カシュガル古城の屋台と路地、香妃園と昆仑塔から見下ろした旧市街を紹介しました。今回は、新疆ウイグル自治区を訪れたメインの目的でもあるパミール高原の絶景旅をレポートします。カシュガルから国道G314を南へ走り、赤い山肌の紅山、白い砂山に囲まれた白沙湖、雪山を望むカラクリ湖を日帰りで巡るツアーで、GPSの記録では往復387km、最高標高は3,632mというなかなか長距離移動のツアーになりました。

パミール高原方面は中国とパキスタンやアフガニスタン、キルギスなどの多くの国と国境を面しており、また、軍事施設なども多く配置されているため居住者以外の立ち入りが制限されています。このためこのエリアに外国人が向かうには、パスポートに加えて辺境管理区通行証が必要。途中の検問所で提示を求められるため、カシュガルに着いた翌日の10月19日の午前に、市内の移民事務サービスセンターで受け取りました。窓口の場所や所要時間、申請書の書き方も、これから行く方の参考になるように本記事でご紹介します。

パミール高原に行くための辺境通行証。今回は空港近くの喀什市移民事務服務中心で対面受け取り

喀什市移民事務服務中心(カシュガル市移民事務サービスセンター)の入口

辺境通行証の窓口は、喀什市移民事務服務中心(カシュガル市移民事務サービスセンター)。喀什市の端にある欧亜大道6号の「中亜南亜深圳産業園」C23棟1階に位置しており、ホテルからはDidiで向かいました。入口には「服务中心 Service Center」の文字が中国語・英語・ロシア語で掲げられ、入ってすぐの場所には荷物のX線検査機が用意されています。ただ、荷物検査は実施されておらず素通り状態でした。

今回の手続きの流れは、タシュクルガン辺境通行証の取り方(2026/3現在)というnoteの記事を参考にしました。この記事によると受付は北京時間の10時30分〜13時30分と16時00分〜18時30分で、外国人はパスポートだけで無料、その場で発行とのこと。番号札は受付開始の30分ほど前から取れるんだとか。

番号札は館内のタッチパネル式の発券機で取ります。画面には業務ごとのボタンが並び、5番の「边防通行证业务办理」、つまり辺境通行証の業務を選ぶ形。表示は中国語、英語、ロシア語の3言語で、英語では「Border Pass Services」です。私が番号札を取ったのは10時10分頃でした。到着した当初は天井から下がったディスプレイは消灯されていましたが、10時半の受付開始時間になると表示がONになり、5番窓口の呼び出し表示にも、同じ3言語の表記が表示されていました。。

ツアー客などで混み合う移民事務サービスセンターの受付ホール

参考にした記事にも、10時過ぎからツアーの団体が来て混むと書かれていて、実際に私の前にもツアー客の一団がいました。11時ごろになると受付ホールは、呼び出し表示を見上げる人で窓口の前が埋まり、中国国内の観光客も含めてかなりの混雑。窓口の係員は中国語のみで、英語は通じませんでした。参考記事では英語が流暢な係員に当たったとあるので、担当者によって違うようです。中国語が話せない場合は、翻訳アプリの画面を見せながらやり取りできるよう準備しておくと安心かと。

窓口では申請書「电子边境管理区通行证申请表」(電子辺境管理区通行証申請表)への記入が必要です。この日は紙の申請書が途中で足りなくなり、係員がその場で印刷した分をみんなで取り合うことに。窓口にはQRコードが2枚貼られていて、上が中国公民用、下が外国人用の申請書の様式につながっています。記入した申請書は、パスポートと一緒に窓口に出す流れ。私も印刷された紙を受け取り、待ち時間のうちに記入を済ませました。

QRコードから開いた中英併記の電子辺境管理区通行証申請表の様式

QRコードから開いた申請書は中国語と英語の併記で、氏名やパスポート番号のほか、中国での滞在先の住所、入国日と滞在期限、緊急連絡先、訪問の目的などを書き込む様式です。滞在先の欄にはホテルの住所を書くことになるので、ホテルの中国語の住所を控えておくとスムーズ。これを事前に印刷して記入しておけば、窓口で紙の取り合いに加わる必要はありません。日本を出る前に印刷して持っていくのがいちばん確実かなと。

様式は2ページあり、2ページ目では行き先(タシュクルガンやカラクリ湖の方面なら新疆维吾尔自治区全部にチェックしておくとベター)と申請期間、メールアドレスを書き、最後に署名します。窓口のQRコードの先にある外国人用の様式2ページをPDFにまとめたものを置いておくので、両方とも印刷して使ってください。通行証は翌日以降のツアーのために取るものなので、到着日の夜に申請書を用意し、翌朝いちばんに窓口へ向かうのが、いちばん無駄のない流れかと思います。

通行証を受け取ったのは11時20分頃。番号札を取ってから1時間強かかりました。受け取った通行証は、窓口のプリンターで印刷された顔写真とQRコード入りの紙1枚。「中华人民共和国电子边境管理区通行证」の表題の下に、行き先として克孜勒苏柯尔克孜自治州(クズルス・キルギス自治州)と喀什地区、発行機関として喀什市公安局が記され、有効期限は発行から1か月後でした。翌日のツアーでは、この紙とパスポートをセットで持ち歩くことになります。

手続きそのものは窓口で書類を出してその場で係官のPCのカメラで顔写真を撮影して終了。何かを聞かれるということもなくあっさり完了します。大人数のツアーなどを捌くのに係官も必死なので、渡航目的や予定などをいちいち確認している暇なんてないような印象でした。

カシュガルの上空を飛ぶ戦闘機

受け取りを待っていた11時過ぎ、頭上を戦闘機が轟音とともに飛んでいきました。カシュガルの空港(喀什徕宁国际机场)は軍民共用で、軍用機も離着陸する空港。突然の爆音には驚かされたものの、日本ではなかなか間近で見かけないので、思わずスマートフォンを向けてしまったほど。周囲は呑気なもので私と同じように建物の外に出て戦闘機にスマートフォンを向けている人がちらほら。

通行証の窓口は中国側の都合に寄って変わることが多く要注意。参考記事によると、2022〜2025年ごろは「喀什国际自驾车与房车营地」(カシュガル国際自動車・キャンピングカー営地)が外国人の窓口とされていましたが、2025年頃に閉鎖。さらに【カシュガルで辺境許可証を取るなら】2026/10/08というnoteの記事では、香妃墓のビジターセンター隣にある派出所で約10分で取れたと報告されていました。移民事務サービスセンターより香妃墓のほうが古城に近いので、喀什に午前などに飛行機や鉄道で到着し、到着日の午後に香妃墓を観光するなら、ついでに当たってみる手もあるかと。

センターの館内には「中央・南アジア商品展示エリア」の棚もあり、ミルクティーの粉や紅茶、手撕牛肉(裂いて食べる牛肉のジャーキー)、革のバッグや人形が並んでいました。隣の「新疆特产」(新疆特産)の棚には、ナッツやドライフルーツ、贈答用の箱。新疆の名を冠した産業園らしく、中央アジア向けの交易拠点としての顔も見えます。

Trip.comで予約した10,931円の混載ツアー。7人乗りバンの助手席で朝8時に出発

カシュガルからカラクリ湖までパミール高原往復387kmのGPSルートと標高の図

翌20日はいよいよパミール高原へ。GPSアプリ(Geo Tracker)の記録では、カシュガルからG314を南へ約200km走り、カラクリ湖で折り返して同じ道を戻る往復387km、実際の時間は11時間21分でした。停車したのは紅山、白沙湖(北岸と南岸)、カラクリ湖の3か所で、標高は出発地の1,200m台から最高3,632mまで登る高低差の大きいツアーになりました。

パミール高原ツアー前夜に用意した菓子パン、水、酸素缶、のど飴、ナン
実際にパミール高原方面のツアーに向けて持っていったもの

前夜には、高地に備えて菓子パン2つ、水3本、ビタミンウォーター、酸素缶、のど飴、ナンを用意していました。結果から書くと、実際に飲んだのはビタミンウォーターと500mLの水を1本半ほど。停車地にはレストランも屋台もあったので、ナンは食べずに持ち帰り、お菓子も不要でした。酸素缶もほとんど使っていません。実際に行ってみての結論としては、水は多めにあると安心ですが、食料はそこまで用意しなくても大丈夫という感じでした。

朝8時でもまだ暗いカシュガルの街を走るツアーのバン

ツアーはTrip.comの「カシュガル発:パミル高原+白沙山+カラクリ湖日帰りツアー」。中国語ドライバーの混載ツアーで、基本料金11,507円から5%引きの10,931円でした。料金には白沙山・白沙湖景区とカラクリ湖景勝地の入場券、交通費、ホテルの送迎が含まれていて、昼食とチップ、ガイドは含まれません。迎えの車に乗ったのは午前8時ごろで、カシュガルの空はまだ夜明け前の暗さ。北京時間を使う新疆では、10月の朝8時でも外はまだ薄暗いままです。

車は黒い7人乗りのバンで、参加者は私を含めて6名、それに運転手。香港やシンガポール、アメリカからの参加者と一緒の車内でした。最初に迎えに来てもらったのが私だったので、そのまま助手席に乗せてもらうことができました。後ろは紫とえんじ色の革張りの独立シートが並び、窓にはカーテンも付いています。肘掛け付きのゆったりした座席で、387kmを走る長丁場でも窮屈さはありません。前面の展望に関心のある参加者は意外に少なく、結果的に助手席から雪山を正面に眺め続けられたのは幸運でした。

予約後の連絡は、ツアー会社が作ったWeChatのグループで行われました。前夜には運転手から「明天早上大概8:00我在富士丽雅酒店门口接你」、つまり明朝8時ごろに富士麗雅ホテルの前で迎えます、というメッセージが届きました。続けて車の写真と「看清楚车牌号,不要上别的车上哦」(ナンバーをよく見て、別の車に乗らないでね)という念押しも。迎車の場所と車の見た目が事前に分かるので、言葉が通じなくても迷わずに乗り込めました。

最初の停車は奥依塔克紅山谷。赤い地層の山と岩山の形をした休憩所

奥依塔克紅山谷の赤い山と木の展望デッキ

カシュガルを出てから約82km、最初に停まったのが奥依塔克紅山谷(オイタク紅山谷)です。到着は10時18分で、滞在は20分ほど。標高は1,737mで、まだ高原というほどの高さではありません。木の展望デッキの正面には、赤茶色の地層が斜めに切り立った山がそびえ、朝の光を受けて表面の筋がくっきりと浮かび上がっていました。デッキの上では観光客が記念撮影をしていました。

赤い岩山をかたどった克州冰川公園AAAAの建物と売店

展望デッキの向かいには、赤い岩山をかたどった大きな建物があり、壁面に「克州冰川公园 AAAA」と刻まれています。克州はクズルス・キルギス自治州の略。克州冰川公園はこの一帯の奥依塔克鎮にある国家4A級の景区で、AAAAは最上位の5Aに次ぐ格付けのもの。建物の足元には土産物と日用品の店が並び、無料の公衆トイレもあるので、長距離ツアーの最初の休憩地点としてちょうどよい場所でした。

助手席の正面に広がるカラコルムハイウェイ・G314:赤茶の地層から雪山が連なる絶景を楽しめる

赤い崖と灰色の地層の山の間を延びる国道G314

G314は、ウルムチからカシュガルを経て、パキスタン国境の紅其拉甫(クンジュラブ)峠へ向かう中国の国道です。カシュガルから先は、中国とパキスタンを結ぶカラコルム・ハイウェイの中国側の区間にあたります。紅山を過ぎると、右手には赤い崖、正面には灰色の地層が重なった山が迫り、まっすぐな道路がその谷間へと吸い込まれていきます。木はほとんどなく、むき出しの岩肌と河原の石ばかり。標高が上がるにつれて、山の色は赤茶から灰色、そして白い雪へと移っていきました。

高徳地図に表示された盖孜辺境検査站の位置

カシュガルから約120km、地図アプリの高徳地図で「盖孜边境检查站」(ゲズ辺境検査站)と表示される辺境の検問所があります。G314沿いの阿克陶県にある施設で、GPSの記録では11時19分に到着して4分ほど停車。車に乗ったまま、係員がドア越しに前日の辺境通行証とパスポートを確認していきました。通行証を見せたのは、この行きの1回だけ。検問所での撮影は控えていたので写真がないのは御愛嬌。

トンネル入口の前方を走る白い警察車両

検問所を出たタイミングからは偶然警察車両が目の前に。眼の前に警察車両がいる状態で一眼レフを取り出して写真を撮って良いものか迷って写真はRokid スマートAIグラスで撮影したもの。中国の大規模LLMであるDeepseekに聞いてみるとこの周辺の警察(公安)車両は交通違反、特にスピード違反を取り締まることに興味があるため写真を撮影したところで問題ないとのこと。その代わり、これまでガンガン他の車を追い越していたドライバーはこの警察車両を追い抜かせずずっとイライラしている様子でした。

11時半を過ぎると、正面に雪をかぶった鋭い峰が現れました。ガードレールの向こうには、広い河原と雪山の連なりが続いている、いよいよパミール高原らしい壮大な景色を楽しむことができます。景色は次第に湖に近づいて来て、次の白沙湖に向かっていきます。

標高3,300mの白沙湖。ヤクと白い砂山、湖畔の屋台で昼食のプロフ

海抜3300mと書かれた白沙湖北岸の看板と湖

12時02分、ホテルを出発して約4時間半でカシュガルから約154kmの白沙湖北岸に到着しました。白沙湖は名前のとおり、白い砂に覆われた山に囲まれた湖。湖を背にした看板には「我在白沙湖北岸等你!」(白沙湖北岸であなたを待っています)、「海拔3300m」、「欢迎来到白沙湖北岸!」(白沙湖北岸へようこそ)の文字。GPSの記録を見ると標高は3,345m。北岸には25分ほど停車して人が少なめの中で絶景を楽しむことができました。

北岸の展望地で迎えてくれたのが、色とりどりの鞍を背負った白いヤクたち。青空の下、ターコイズブルーの湖の向こうには、白い砂山が連なっています。ヤクは5頭ほどが湖を背に並び、角には黄色やピンクの飾り。観光客を乗せて記念撮影をするためのヤクで、湖と砂山とヤクを一枚に収められる構図は、白沙湖を代表する景色の一つです。真っ白な毛並みと湖の青の組み合わせは、写真で見ていた以上に鮮やかでした。

尾根の上ではヤクに乗って写真を撮る観光客の姿もあり、尾根の先には赤い小旗が中国の国旗がいくつも立てられていました。その背後には、逆光に輝く雪山。白い砂山の側とは反対の方向を向くと、雪山がすぐそこまで迫っています。

白沙山-白沙湖景区の看板と入場ゲートに並ぶ観光客

北岸から少し走り、12時38分に南岸の「白沙山-白沙湖 景区」に着きました。12時42分ごろにガイドから案内があり、13時50分に出発するので、それまでの約1時間10分で見学と昼食を済ませること、昼食はツアー代に含まれないので各自で店を探すこと、集合場所は車であることが伝えられます。茶色の看板を掲げた景区の入場ゲートでは、ツアーの参加者も列に並んで入場。ゲートの脇には民宿やカフェの建物も並んでいました。

白沙湖 南岸の景区に入ると、湖沿いの木道は観光客で埋まっていました。木道の柱には「世界的帕米尔 璀璨的阿克陶」(世界のパミール、輝くアクト)の文字。白沙湖は克州アクト県にあり、県を挙げた観光地として売り出されている様子が伝わってきます。高い場所から湖岸を見下ろすと、何十頭もの白いヤクと観光客が浜を埋め尽くし、馬に乗った人の姿も。国境近くの高原の湖というイメージとは裏腹に、すっかり整備された大観光地という印象でした。

DJI Osmo Action 2の超広角で撮った澄んだ白沙湖と白い砂山

南岸の景区では、湖畔の浜まで降りることができます。DJI Osmo Action 2の超広角で撮ると、黒い砂の浜から湖の底が透けて見えるほど水が澄んでいて、遠くの白い砂山まで湖面が続いていました。この規模の湖で波もなくそして澄んだ湖面を楽しめるというのは自然の偉大さを感じさせられます。

雪の峰の手前を走るトラックと白沙湖1号展望台通報点の案内板

景区の前を通るカラコルムハイウェイに出ると、荷台にシートをかけたトラックの背後に雪の峰がそびえていました。この景色自体が中国の大陸国家としての広さを感じさせられます。路肩には「白沙湖1号观景台报警点」(白沙湖1号展望台通報点)と書かれた加克拉克辺境派出所の案内板。カラコルムハイウェイ沿線では、定期的にこのような国境地帯の警察の連絡先が掲げられており交通事故などの緊急事態が発生した際にはこの看板の番号で居場所を伝えられるようになっています。

昼食に選んだのは、駐車場の前で大鍋のプロフを炊いていた店。1皿30元で、支払いはWeChat Payでした。若い店員がピンクのたらいから米を鍋に移し、網杓子で黄色いニンジンの浮いた煮汁と混ぜていきます。皿に盛られたプロフは、干しブドウとニンジンが混ざったご飯に羊肉がひと切れのる一皿。カシュガルの古城で食べたプロフにはなかった干しブドウの甘みが加わっていてなかなか美味でした。。ウズベキスタンで食べて以来プロフは大好物なので、標高3,300mで炊きたてを食べられたのは嬉しいところでした。持参したナンは結局出番なし。実際に白沙湖を出発したのは、案内より少し遅れた14時過ぎでした。

標高3,600mのカラクリ湖。パオの向こうの雪山と、湖畔に立つ「党徽映昆仑」

雪の積もったパオが並ぶカラクリ湖畔と雪山

白沙湖からさらに南へ約40km、喀什のホテルを出発して約7時間の14時39分にカラクリ湖に着きました。カシュガルからは約200km、湖面の標高は3,600m台で、今回のツアーの折り返し地点です。湖畔には白いパオ(遊牧民のテント)が並び、屋根にはうっすらと雪。白沙湖では晴れていた空も、ここでは雲が低く垂れ込め、雪をまとった山々の上部は雲に隠れています。カラクリ湖は7,500m級のムスタグ・アタ(慕士塔格峰)を望む湖として知られ、湖岸ではラクダの姿や、湖の上を飛ぶドローンの姿も見えました。

カラクリ湖での滞在は1時間10分ほど。湖畔を歩くと、白沙湖のとき以上に息が上がり、少しふらつく場面もありました。腕時計の高度表示は3,660mで、GPSの記録では14時58分ごろに記録した3,632mがこの日の最高地点。酸素缶は持っていたものの、ほとんど使わずに済みました。高山病が心配な方は1本持っておけば十分で、むしろ大事なのは急いで歩かないことかと思いました。

雪の斜面を背に翻る五星紅旗

湖畔の一角には、雪に覆われた斜面を背に五星紅旗が翻っていました。白とグレーだけの山肌の中で、旗の赤だけがくっきりと浮かび上がります。国境に近いこの一帯では、景勝地のあちこちに国旗が掲げられていて、パオや湖と並ぶ風景の一部になっていましたのも印象的。

カラクリ湖畔の党徽映昆仑のモニュメントと雪山

湖畔の展望地には、青いモニュメント「党徽映昆仑」(党の紋章が崑崙に映える)が置かれていたのも中国らしい光景。隣の標識には「昆仑铸忠魂 党徽耀初心」(崑崙が忠魂を鋳る、党の紋章が初心を照らす)、矢印の標識には「昆仑山脉下」(崑崙山脈のふもと)の文字。背後には氷河を抱えた雪山がそびえ、絶景の展望地そのものに、党の標語を掲げた撮影スポットが組み込まれていました。

白沙湖とカラクリ湖は、どちらも雪山に囲まれた高原の湖で、正直なところ受けた印象は2つでそう大きく変わらない印象。白沙湖は白い砂山とヤク、カラクリ湖はパオと雪山という違いはあるものの、2つの湖を比べて見るためにツアーに参加するなら、少し物足りなく感じるかもしれません。それ以上に圧倒されたのが、道中から湖まで続く雪山の雄大さ。標高が上がるほど山の雪は増え、カラクリ湖では湖畔のパオの屋根にまで雪が積もってくグラデーションを楽しむと良いかなと。

英語が通じない運転手とRokid スマートAIグラス。眼前に字幕を表示できるので高い利便性を実現

今回のツアーの運転手はツアーの説明にもあったように、中国語のみしか話せず英語は話しません。そして私も中国語は挨拶くらいしかできず意思疎通が困難。そこで今回の旅では、メーカーからお借りしたRokid スマートAIグラス(ディスプレイ付き)を翻訳に使いました。相手の話す言葉がレンズの中に日本語の字幕で表示されるので、スマートフォンを取り出さなくても会話の流れを追うことができます。グラスを掛けたまま相手の顔を見て話を聞けるというのは、スマートフォンの翻訳アプリとの大きな違いでした。

白沙湖でのツアー案内は、Rokidの字幕で集合時刻、昼食は各自、見学時間は約1時間10分という要点を拾うことができました。ただ、出発時刻の表示は「1時50分か13時50分」と揺れていたので、最後は時計で確認。車内での英語の雑談でも、shareを「恥をかかせる」、漢字の意味のcharactersを「暦」と訳すなど、一語の聞き違いで意味が大きく変わる場面がありました。完全な通訳ではないものの、置いてけぼりにならないための補助としては十分に役立った印象です。

RokidスマートAIグラスのレンズに表示された翻訳字幕と紙のメニュー

字幕は、聞き取った原文と日本語訳が上下に並ぶ緑の文字で、その下に翻訳の言語、時刻、電池残量が表示されます。ツアー中はGoogle翻訳などのスマートフォンアプリも併用して運転手の説明を訳して見ていましたが、翻訳精度とスピードは圧倒的にRokidスマートAIグラスのほうが早かった印象。スマートフォンの場合、例えば車の中などの周囲に騒音がある状態ではピンポイントで運転手の中国語を拾うというのができない事が多かったのに対し、マイクの位置が耳に近く声を聞き取りやすいRokidのほうがきちんと声も拾えていた印象でした。

この写真は、その夜の夕食の店で撮ったグラスの録画から1コマを切り出したもの。グラスにはカメラも付いていて、助手席から撮ったトンネルの警察車両の写真も、手を使わずにグラスで撮影できるためここぞという場面でサクッと見たままを撮影できるのも強みと言えました。

RokidアプリでRokid スマートAIグラスの電池98%を表示した画面

出発の朝、Rokidのアプリで見たグラスの電池残量は98%。翻訳を使い続けると電池の減りは早く、UGREEN Nexodeの巻取式USB-Cケーブル内蔵モバイルバッテリー(20,000mAh・165W)で何度も充電しながら使いました。帰着した時点で、モバイルバッテリー本体には76%の残量。スマートフォンも充電しつつ、Rokid スマートAIグラスも充電しつつ、という使い方をしましたが、1日の翻訳には20,000mAhではかなり余裕があった印象でした。

【RokidスマートAIグラス】世界初デュアルチップ構成が生む圧倒的レスポンス。最大1,500ニットの視認性と4K対応12MPカメラを52.5gに搭載。香港の高速鉄道や東京での自転車移動で分かったメリット・デメリットをレビュー

帰り道の交通安全。事故車の展示とスピードガンを構える警官の人形、「维稳巡逻」のダミーパトカー

カラクリ湖を出たのは15時48分ごろ。帰りは来た道をそのまま引き返していきます。湖沿いのレストランの塀には「一生をかけて、祖国のために国境を守る」という意味の標語が書かれていました。湖を背にすると、標識のとおり62kmにわたってカーブが続く谷あいの道。行きは食い入るように見ていた雪山も、帰りはすっかり見慣れた景色になり、車内ではついうとうとしていました。

帰り道では検問所を2か所通過。16時50分ごろの行きに辺境通行証を見せた盖孜辺境検査站では帰りは手前に車の列ができていたものの、車越しにパスポートを検査官に渡しただけで5分ほどで抜けられました。様子が違ったのは、カシュガルまで残り50kmほどの疏附県の検問所です。朝は時速40km台のまま通り過ぎただけでしたが、カシュガルへ向かう帰りは車を降りてパスポートを見せ、本人かどうかの照合を受けることになりました。とはいえ、特に何か聞かれたりすることもなくあっさり終了。

徐々に高度を下げていくとポプラ並木の平地に入ります。カーブが多かった区間を抜けてほぼ真っすぐ進んでいける気持ちの良い区間になると今度は交通安全の看板が次々と現れます。道端には、疏附県の公安局交通管理大隊が置いた警官の等身大の人形も。無理な追い越しをやめようと呼びかける大きな看板の下では「慢(徐行)」の札を掲げ、少し先の路肩では、道路に向けてスピードガンを構えていました。

居眠り運転を禁じる中国語とウイグル語の標識に続いて現れたのが事故車の展示。「事故10回のうち9回はスピードの出しすぎ」と書かれた看板の下、コンクリートの台座に載っていたのは、前がつぶれて後輪も外れた青い車。他にも燃え尽きたあとのような軽トラも置いてあったりと生々しいものを見せて事故がどれだけ悲惨なのかを示してスピード違反をしないようにさせていたのが印象的でした。

ここまで念を押すのは、看板の文句どおり、この道の事故の多くに速度の出しすぎや無理な追い越しが絡んでいるからなんだとか。カシュガルからタシュクルガン方面へ延びるG314(カラコルム・ハイウェイ)は、観光シーズンになるとツアー車やレンタカーが一気に増える一方、山あいは長いカーブの連続。地元の交通警察は、区間ごとの平均速度を測る取り締まりや、無理な追い越し・すれ違いの摘発に力を入れていて、繁忙期にはパトカーが車列の先頭について速度を抑えながら走らせることもあるそう。行きの道で、それまで次々と前の車を抜いていたドライバーが、前を走る警察車両だけはずっと追い越せずにいたのも、こうした取り締まりを思えば納得でした。

维稳巡逻と書かれた、後輪の空気が抜けたダミーのパトロールバン

同じ並木道の路肩には、「维稳巡逻」と書かれた白いバンも停まっていました。直訳すると「安定維持パトロール」。屋根には青い回転灯が載っています。ただ、写真を拡大してみると後輪はぺしゃんこにつぶれ、ナンバープレートの位置にも番号ではなく「维稳巡逻」の赤い札が付いているだけでした。走るための車ではなく、スピードガンを構えた警官の人形や事故車の展示と同じ道端に置かれた、ダミーのパトカーのようです。パトカーの姿が目に入れば、ドライバーは自然とアクセルを緩めるもの。人形と同じく、速度を落とさせるための置き物なのでしょう。

その夜、DeepSeekに、市内に入る手前の検問と、警察の多さについて尋ねてみました。一度は検問や、地域を細かな区画に分けて管理する「網格化管理」、顔認証についての回答が表示されたものの、表示が終わるとその回答は「申し訳ございませんが、現在のところその質問にはお答えできません」の一文に置き換わってしまいました。

古城前で降りて紅瑪瑙快餐厅へ。35元の本店特色拉麺と羊肉串

カシュガルに戻ったのは20時頃。ホテルではなく古城の前で降ろしてもらい、近くの紅瑪瑙快餐厅(紅瑪瑙ファストフード食堂)で夕食にしました。カウンターの上には羊肉串(羊肉の串焼き)、拌面(和え麺)、干煸炒面(乾煎り焼きそば)、大盘鸡(大皿の鶏煮込み)などの写真付きメニューがずらりと並び、壁際には鸽子汤(鳩のスープ)の写真も。注文は、テーブルに置かれた中国語とウイグル語の紙のメニューをGoogleレンズで日本語に訳し、店員さんにメニューを指さして伝えました。Rokidの字幕に出たのは「はい、これともう一つ、はい」程度で、料理名までは拾えていません。まずは金属のトレーにのった羊肉串を1本。香辛料をまぶした肉は端に焦げ目がつくまで焼かれていました。

紅瑪瑙快餐厅の本店特色拉麺(ラグマン)

メインは、この店の看板メニューという本店特色拉麺で35元。拉麺は中国語で引っ張って延ばした麺のことで、ウイグル語ではラグマンと呼ばれます。手延べの麺と、羊肉にピーマン、トマト、キノコを炒め合わせた具が一皿に盛られ、具の赤いソースを麺に絡めて食べる新疆の定番料理です。麺は細めで、具の量もたっぷり。ただ味は普通で、昼のプロフほどの感動はありませんでした。この店には、翌日の夜にもう一度来ることになります。

標高3,600mの雪山と湖を日帰りで見たい方に最適なパミール高原ツアー

カシュガルのパミール高原日帰りツアーは、10,931円という料金で、往復387km、最高標高3,632mの道を走り、紅山、白沙湖、カラクリ湖の3か所を巡れるツアーでした。辺境通行証も前述のように取得はそんなに大変ではなくカシュガルの絶景を楽しみたければ2泊3日程度の日程があれば順調に行けば問題なく楽しむことができるはず。

一番の見どころは、やはり道中の車窓。赤茶の地層から雪山へと景色が切り替わっていくG314の道のりを、助手席の正面から眺め続けられたのは忘れられない体験でした。白沙湖のヤクと白い砂山、湖畔で食べたプロフ、カラクリ湖のパオと雪山も、高原ならではの思い出。標高3,000mを超える雪山と湖を、カシュガルから日帰りで見てみたい方には、このツアーは最高の選択肢になるはずです。国境に近い高原の今を自分の目で見られるという点で、パミール高原への入門にぴったりなツアーといえました。翌日はカシュガルの古城に戻り、朝の開城式と博物館を訪ねます。

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銀行をやめて人材系のHRテックらしいメガベンチャーにいたかと思えば、今はSIerで企画とかしています