
当ブログでは定期的に海外行きの話をしています。昨年6月の新婚旅行では、妻と2人でウズベキスタンを夜行列車で巡り、首都タシケントから西のヒヴァまで1,049kmを寝台列車で移動し、城壁に囲まれたイチャン・カラを歩いた旅は、当ブログでも旅行記として紹介しています。サマルカンドまで含めた旅の細かな記録は、妻のブログ「わりとこうアムログ」のウズベキスタン旅行記もご参照いただければ。そして今年の9月には、妻が一人でキルギスへ。首都ビシュケクからソンクル湖まで足を延ばした様子も、同じブログにキルギス旅行記として書かれています。昨年は2人でウズベキスタン、今年は妻が一人でキルギス。それなら自分も同じシルクロードを攻めてみようと決めたのが今回の旅です。
旅程は10月17日から31日までの15日間。東京から上海を乗り継いで中国の西の端、新疆ウイグル自治区のカシュガル(喀什)に入り、ウルムチまでは夜行列車で移動。そこからカザフスタンのアルマトイ、ジョージアのトビリシへと西へ進み、上海経由で成田に戻るルート。飛行機は6便に、夜行列車は1本に乗車するなかなかのロングコースです。中国では、カシュガル古城の散策に加えて、外国人は辺境通行証を取ってから向かうパミール高原への日帰りツアーも組み込みました。
まずは中国での7日間を、新疆ウイグルの旅として書いていきます。今回は旅程と費用の全体像、上海での乗り継ぎ、カシュガルに着いた日の古城と、2日目に回った香妃園と昆仑塔(崑崙塔)まで。カシュガルの古城では、屋台が並ぶ土色の路地を歩くあいだも、木々に吊るされた国旗や広場の標語、路地の監視カメラが常に視界に入ってきました。写真はNikon Z5IIとOPPOのスマートフォン、DJI Osmo Action 2で撮影しています。
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上海・カシュガル・ウルムチからアルマトイ、トビリシへシルクロードを西へ。15日間の長期間旅行

今回の航空券は区間ごとに分けて手配。往路は中国東方航空で羽田から上海浦東、上海からカシュガルへと乗り継ぎ、ウルムチからはエア・アスタナでアルマトイ、トビリシへ。帰りのトビリシから上海経由で成田に戻る中国東方航空の便は、JALの特典航空券でビジネスクラスを確保。特典航空券でも税金と燃油サーチャージなどはかかりその金額は39,720円でした。中国国内の陸路の移動は、カシュガルからウルムチへの夜行列車Z6518の1本だけという旅程にしました。
| 日程 | 都市 | 移動・内容 |
|---|---|---|
| 10/17(土) | 東京→上海 | 羽田17:10発のMU8634(上海航空運航)で上海浦東へ。中国東方航空手配の乗継ホテル泊 |
| 10/18(日) | 上海→カシュガル | MU5595(7:10発→13:55着)。古城と汗巴扎。富士国際麗雅ホテルに4泊 |
| 10/19(月) | カシュガル | 辺境通行証の受け取り、香妃園、高台民居(改装中)、昆仑塔 |
| 10/20(火) | パミール高原日帰り | 紅山・白沙湖・カラクリ湖。約387km、最高標高3,632m |
| 10/21(水) | カシュガル | 開城式、ユスフ・ハス・ハジブ廟、カシュガル地区博物館 |
| 10/22(木) | カシュガル→ | 開城式(全編)、エイティガル・モスク。21:30発の夜行列車Z6518(プレミア軟臥・2人個室) |
| 10/23(金) | ウルムチ | 9:02着。新疆博物館、国際大巴扎。温徳姆美吟酒店(ウルムチ天山国際空港・鉄路局地下鉄駅店)に1泊 |
| 10/24(土)〜26(月) | アルマトイ(2泊) | KC688でカザフスタンへ。ビッグ・アルマトイ湖ツアーなど(予定)。宿はオトラル |
| 10/26(月)〜30(金) | トビリシ(4泊) | KC141でジョージアへ。旧市街、カズベギなど(予定)。宿はソール パレス |
| 10/30(金)〜31(土) | トビリシ→上海→成田 | MU286・MU271(JALの特典航空券・ビジネスクラス) |
ウルムチからアルマトイへのKC688は12時40分発で11時30分着と、時差の関係で出発より早い時刻に着くのが面白いところ。アルマトイからトビリシへは朝8時05分発の便なので、ホテルは5時過ぎに出る計算です。帰りはビジネスクラスで、上海浦東で7時間ほどの乗り継ぎを挟むスケジュールになりました。本来上海→東京便は中国東方航空はもう少し本数があるのですが、JALの特典枠では7時間トランジットにしかできなかったのがちょっと残念。
中国でもGoogleが使える2枚のeSIMとWeChat Pay。航空券・宿・列車・ツアーの費用まとめ

羽田のカウンターでは、羽田〜上海浦東と上海浦東〜カシュガルの2枚の搭乗券がまとめて発券。バゲージもスルーバゲージにできるため浦東での受け取り無しでトランジットホテルに行くことが可能。(スルーバゲージにしないことも可能)行き先はカシュガルでも、中国の入国審査を受けるのは最初に降りる上海浦東。翌朝の上海〜カシュガルは国内線になります。
往路の航空券は、当初はエア・アスタナの2区間とあわせた4区間をTrip.comの1つの予約で取り、168,500円を支払っていました。実は最初の手配のあとにカシュガル滞在を伸ばしたくなり、飛行機を2区間変更したことで計35,090円が払い戻されたため、羽田〜上海〜カシュガルの負担は133,410円。そのため、エア・アスタナ分は改めて別に予約しています。
| 区分 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 航空券 | MU8634・MU5595(羽田→上海浦東→カシュガル) | 133,410円 |
| 航空券 | KC688(ウルムチ→アルマトイ) | 32,840円 |
| 航空券 | KC141(アルマトイ→トビリシ) | 42,910円 |
| 航空券 | MU286・MU271(トビリシ→上海浦東→成田、ビジネスクラス) | JALの特典航空券(税金・燃油サーチャージ等39,720円) |
| 列車 | Z6518 プレミア軟臥(カシュガル→ウルムチ) | 22,897円 |
| 宿 | 上海の乗継ホテル(1人部屋の差額) | 3,611円 |
| 宿 | 富士国際麗雅ホテル(カシュガル4泊) | 27,192円 |
| 宿 | ウルムチ1泊 | 3,590円 |
| 宿 | アルマトイ2泊 | 22,870円 |
| 宿 | トビリシ4泊 | 45,704円 |
| ツアー | パミール高原・白沙湖・カラクリ湖の日帰り | 10,931円 |
| ツアー | ビッグ・アルマトイ湖と温泉 | 10,514円 |
| ツアー | カズベギ山の少人数ツアー | 3,137円 |
| 通信 | True GO Travel MyPlan(Asia & Australia)Unlimited 15日 | 4,691円 |
通信はタイの通信会社TrueのeSIM「GO Travel MyPlan(Asia & Australia)Unlimited 15日」を用意しました。中国・カザフスタン・ジョージアを1枚でカバーし、1日1.5GBまでは最高速度、それを超えても10Mbpsで使い続けられるプラン。タイ経由のローミングになるため、中国国内でもGoogleやLINEがVPNなしで使えるのが最大のポイントです。価格は995バーツで、購入時のレートでは4,691円。15日間、3か国分の通信をこの値段でまかなえるのは嬉しいところでした。
中国滞在中だけは、Almondの無制限eSIMも併用しています。自宅には以前レビューしたTERRAMASTER F2-425を置いていて、ホテルのWi-FiからTailscaleでこのNASを経由させれば、日本の自宅回線からつないでいるのと同じ状態で通信できます。ただ、家庭の回線とNASを経由するぶん、速度には限界がありました。通信が途切れると地図も配車アプリも使えなくなるので、Wi-Fiに頼らずに済むよう、eSIMを2枚持ちにしたというわけ。
支払いはWeChat Payがメインで、ときどきAlipay。どちらも日本のクレジットカードを登録して使えるので、現金は少額だけ用意。中国では結局1回も現金を出す場面はなし。2つの電子決済の使い分けに特に理由はなく、その場の気分です。香妃園の入場券も、入口の自動券売機でWeChat Payを使って買えました。もう一つ忘れてはいけないのがパミール高原の方面へ向かうには外国人には必須の辺境管理区通行証。今回はカシュガルに着いた翌日の午前に、市内の移民事務サービスセンターで受け取りました。
羽田から上海浦東の乗継ホテルへ。浦東からはDIDIで移動し。1人部屋の差額は150元也


羽田空港第3ターミナルでは、M列のカウンターで上海航空と中国東方航空の受付をしていました。乗ったのは中国東方航空のMU8634で、実際の運航は上海航空のFM896です。チェックインは14時10分から開始。エコノミークラスは開始直後から長蛇の列で30分ほどで搭乗券をゲットしました。
順調に旅程が進むかと思っていたら、上海からの折り返し便が大幅遅延したことで出発は定刻17時10分に対して18時00分に変更。結局登場開始が18時過ぎになり1時間半ほどの遅延に。遅延は困りましたが、プライオリティ・パスで入れるSKY LOUNGE SOUTHに長居できたので、待ち時間はそれほど苦ではありませんでした。一方で、上海の乗継ホテルで眠れる時間が短くなったのは微妙なところでした。


浦東に着いてからは、最初からDIDI(滴滴出行)で乗継ホテルへ向かいました。前回中国東方航空のビジネスクラスで深圳へ行ったときは、到着階の乗り継ぎ窓口でホテル行きのシャトルバスの時刻と乗り場を教えてもらう流れでしたが今回は窓口には寄らず、ライドシェア乗り場からそのまま配車しています。乗り場の柱には大きく番号が振られていて、21時過ぎの夜でも乗り場の位置は分かりやすい印象。浦東空港からホテルまでは約7kmなので、車ならすぐの距離です。


乗継ホテルは、中国東方航空のアプリにある乗り継ぎ特典「中转住宿」(乗り継ぎ宿泊)から予約した上海三甲港緑地鉑派酒店(Q-Box Hotel Shanghai Sanjiagang)。前回はビジネスクラスだったので1人部屋に無料で泊まれましたが、エコノミーは相部屋が前提。1人部屋にするには差額が必要で、今回は3,611円(約150元)を払いました。バウチャーにも、部屋タイプとして「单人间(需补差)」、つまり差額の必要なシングルルームと書かれています。客室はダブルベッドにソファとデスクまでそろっていて、数時間眠るだけには十分な広さでした。

翌朝は、5時発のホテルの無料シャトルバスで空港へ戻りました。シャトルバスの運行は5時から22時30分までで、始発に乗れば7時10分発の便の手続きに間に合います。車内の時計の表示は5時05分。前夜にDidiに乗ったのが21時過ぎだったので、ホテルで過ごせたのは7時間ほどです。4時台に起きてチェックアウトするのは乗り継ぎの現実として覚悟しておきたいところ。とはいえ空港に着いてからは、プライオリティ・パスで中国東方航空のラウンジに入り、朝食をとってから搭乗口へ向かうことができました。
【中国東方航空ビジネスクラス】直行便のエコノミーより安く全4区間ビジネスでいく中国深圳。上海乗り継ぎのトランジットホテルもフル活用の中国東方航空ビジネスクラス利用レポート
MU5595で上海からカシュガルへ約7時間。窓から雪山を眺められるのも嬉しいところ

上海浦東からカシュガルへはMU5595で、定刻は7時10分発、13時55分着。中国大陸を東の端から西の端までほぼ横断する6時間45分のフライトです。機材はボーイング787で、機内はほぼ満席。国内線ながら、機内Wi-Fiが「单次全航程礼遇」(1回分の全区間を無料で提供する特典)として無料で使えたのは嬉しいポイント。SNSで絶景の様子を投稿できるためデジタルデトックス失敗できます。窓の外には、雪をかぶった山並みが長い時間続きます。


機内食は、カレー風の煮込みをのせたご飯にブロッコリー、パン、グレープフルーツジュースの組み合わせ。カシュガル空港ではボーディングブリッジのあるスポットに到着し、白い787が霞んだ空の下に停まっていました。国内線なので到着後の手続きは何もなく、預けた荷物もすぐに出てきました。空港からホテルまでは、宿泊する富士国際麗雅ホテルの送迎を利用。出発する客を空港へ送ってきたホテル名入りのセダンにそのまま乗る形で、出発階の2階で拾ってもらいました。
国旗の並木を抜けて汗巴扎へ。焼き麩とザクロ、大鍋のプロフと土産物の路地を歩いた到着日の古城

ホテルに荷物を置いて、歩いて行ける距離のカシュガル古城へ。古城の並木道に入ってまず目に入ったのが、木々に吊るされた多数の五星紅旗でした。赤い丸い飾りと一緒に枝ごとに国旗がぶら下がり、街灯の柱にも小旗が付けられていて、通りの奥までずっと赤い色が続いています。道の両側には布製品や雑貨を吊るした土産物の店が並び、観光客が行き交う穏やかな午後の風景。その上に国旗が重なっている光景が、カシュガル、つまり新疆ウイグル自治区の現状を示しているようで印象的でした。

並木道を歩いていると、汗巴扎(ハン・バザール)の大きなアーチ門に着きました。扁額には「汗巴扎」の漢字とウイグル文字が並んで表記。なお、巴扎はバザールの音訳です。カシュガル古城はタリム盆地の西の縁、パミール高原のふもとに位置するオアシスの旧市街で、2015年7月20日に中国の観光地の格付けで最上位の5A級に指定されています。汗巴扎の周辺は屋台と飲食店が集まる一角で、古城観光の玄関口のような場所になっています。

屋台でまず目立っていたのがザクロ。真っ赤な実を山のように積んだ屋台では、搾ったザクロジュースがボトルやカップに入って並び、隣には円盤形のナンが高く積み上げられています。新疆は果物の産地として知られ、秋はザクロの収穫期。ナンとザクロジュースを並べて売る屋台は古城のあちこちにあり、どの店も、ザクロの赤とナンの小麦色の組み合わせで目を引きます。店頭にはザクロの実を搾る道具も置かれていて、その場で搾ったジュースを買えるのが屋台の売り。ペットボトルに詰めたものもあるので、持ち歩いてホテルで飲むこともできます。



炭火の上で焼かれていたのは、渦巻き状に串へ巻きつけた焼き麩、烤面筋(カオミエンジン。直訳すると焼いた麩)。小麦のグルテンを串に巻いて焼き、タレと香辛料をまとわせた屋台の定番で、看板には1本3元とありました。民族風の刺繍のベストを着た店員が、網の上で何本もまとめて焼き上げていきます。3元という値段なので気軽に1本買って、串を片手に路地を歩けるのも嬉しいところ。



夕食はプロフ。大きな鍋に黄色いニンジンの細切りを混ぜたご飯が盛られ、その上に羊のあばら肉がずらりと並んでいます。店員が大きな柄杓で一皿ずつよそっていく姿は、見ているだけでも楽しい光景。プロフは米を羊肉やニンジンと一緒に油で炊き込む料理で、ウイグル語ではポロとも呼ばれ、ウズベキスタンでも国民食として知られています。皿に盛ると、ニンジンの混ざったご飯に骨付きの羊肉がひと切れのる形でした。ニンジンは日本でよく見るオレンジ色ではなく、新疆らしい黄色いニンジンです。


プロフを食べた店の店内は、壁一面に料理写真のメニューが並び、赤いソファ席が続く大衆食堂の雰囲気です。写真付きのメニューがあれば、中国語やウイグル語が読めなくても写真を撮影して指をさして注文できるのは助かるところ。店の並ぶ通りには、羊肉の串を並べた屋台も。価格表を下げた店先で、店主が袋に入れた料理を客に手渡していました。店頭には生の串も並んでいます。


古城の公衆トイレの案内板は、中国語、ウイグル語、英語、韓国語、日本語の5言語表記で、日本語では「観光用トイレです」と書かれていたのは意外。カシュガル滞在中に日本人を見かけることは皆無でしたが、カシュガル市の政府としては日本人も観光客として呼び込みたいと思っている様子。なかなか日本での知名度はない、むしろまだまだ危険なイメージを日本人は新疆ウイグル自治区に対して持っていますがこれを払拭していきたいと思っているようでした。
メインの通りを一本外れると、土色の壁が続く人通りのない路地に入ります。古城は大規模に造り直された街ですが、路地に入ると古びた景観がきちんと保たれていました。後述するように喀什古城は2000年代に入ってから多くの建物と作り直しておりもともとの景観は失われているともいわれています。また、裏路地の至る所に監視カメラが設置されているのも防犯以上の何かを感じさせられました。



土産物店には、金色のランプ形の置物や刺繍のコースター、絵皿が手書きの値札付きで山積みになっています。コースターは1枚8〜9元ほどで、「1个也批发价」(1個でも卸値)と書かれた札も。冷蔵庫マグネットの壁には「5元买5赠一买十赠3」、つまり1個5元で、5個買うと1個、10個買うと3個のおまけという手書きの案内がありました。民族衣装の人形や古城の家並み、ラクダをかたどったマグネットが並び、旅の記念に少しずつ集めるのにちょうどよい価格帯です。
毛沢東像と「中華民族共同体意識」の標語。人民広場とパトカーが並ぶ到着日の街

カシュガルでは警察や武装警察(武警)の姿を街のいろいろな場所で見かけたのも事実。写真は最終日の夕方にカシュガル駅前で撮ったもので、車体に「武警」と書かれた白い車両が、コーンとバリケードテープで囲まれた一角に停まっていました。武警は観光地の要所要所に配置されていた印象。また、党中央の指揮下にある武警の他に地元の喀什警察の特警もあちこちで見かけました。特警側は通常の警察も兼ねているため観光客の道案内なども実施していましたが、全体的に警備レベルが高い印象を受けます。
中国には何度も訪問しており、空港や大規模な鉄道駅には武警が配置されていることは見かけていたものの、9月に訪れた深圳では武警をほとんど見かけなかったので、その差ははっきりと感じられるところ。観光客が普通に歩いている横に警察の車両が停まっているのが、この街の日常の風景という印象でした。

人民広場には、右手を挙げた大きな毛沢東像が立っています。台座の前には赤い横断幕で「铸牢中华民族共同体意识 建设社会主义现代化新疆」、その下には「贯彻二十大 争创文明城 奋进新时代」の標語。直訳すると前者は「中華民族共同体意識をしっかりと築き、社会主義現代化の新疆を建設する」、後者は「第20回党大会の精神を貫徹し、文明都市を目指して新時代へ奮進する」といった意味。

人民広場の周辺は、古城とは打って変わって現代的な街並み。人民広場近くの大通りには黄色いタクシーと電動三輪が行き交い、HUAWEIやAppleの看板を掲げた店が並びます。電動三輪は地元の人の足になっている様子。古城の土色の路地から少し歩くだけで、中国のほかの都市とほとんど変わらない大通りに出るのも、カシュガルの面白いところでした。古城、人民広場、ホテルの3か所が歩いて回れる範囲にまとまっているのは、短い滞在でも動きやすいポイントです。
古城まで歩いて行ける富士国際麗雅ホテル。4泊27,192円で洗濯機は無料


カシュガルで4泊したのが、富士国際麗雅ホテル(富士丽雅酒店/FUJI HOTEL)。人民広場のすぐそばにあり、古城まで歩いて行ける立地です。料金はTrip.comで予約して4泊27,192円、1泊あたり約6,800円。客室はダブルベッドにテレビ、小さな丸テーブルと椅子を置いたシンプルなつくりで、一人で泊まるには十分な広さでした。空港からの送迎があるのも、到着日に移動の心配をしなくて済む点で助かるところです。

長旅で助かったのが、宿泊者が使えるランドリー。Haierのドラム式洗濯機と乾燥機が置かれていて、洗濯機は無料で使えました。中国のホテルでは洗濯機を無料で使えるところが多く、15日間の旅の序盤でまとめて洗濯できたのは嬉しいポイントです。ただ、乾燥機は2台のうち1台が故障していて、少し困ることになりました。とはいえ部屋で干して乾かすこともできるので、大きな問題にはならずに済んでいます。
香妃園の名で知られるアパク・ホージャ廟。鳩の舞う入口から青と緑のタイルの霊廟、高低礼拝寺へ


カシュガル2日目の10月19日は、午前に市内の移民事務サービスセンターでパミール高原へ向かうための辺境通行証を受け取ったあと、昼前に香妃園へ向かいました。入口の前の広場では鳩の群れが一斉に舞い上がり、装飾の施された柱の間を観光客が歩いていきます。入口の石には赤い文字で「香妃園 Xiang Fei Park」。入場料は40元で、入口の自動券売機でWeChat Payを使って入場券を買えました。窓口に並ばずに済むのは嬉しいところです。

園内に入ると、透かし彫りの格子壁が弧を描いて続く回廊があります。白い柱とアーチの向こうに雲のない青空が広がり、格子を通った日差しが石畳に細かな模様の影を落としていました。撮影したときは人がほとんどおらず、回廊の端から端まで見通せる静かな空間。格子にはイスラム建築の幾何学模様が取り入れられていて、香妃園の入口らしい雰囲気をつくっていました。

緑のタイルのドームを背に立っているのが、2体の騎馬像。台座には赤い文字で「乾隆与香妃」、つまり乾隆帝と香妃と書かれています。清朝の官人風の帽子をかぶった人物と、もう一人の人物が並んで馬に乗る姿で、香妃の物語を伝えるための像という位置づけ。手前には白い蝶のオブジェも置かれていて、霊廟へ向かう前の庭園が、香妃の物語を見せる場として整えられている様子が分かります。
ここで気になるのが、香妃という名前と霊廟の本来の主の関係です。香妃は乾隆帝に嫁いだとされるウイグルの女性で、体から良い香りがしたという伝説で知られています。ただ、この霊廟は本来、17世紀にカシュガル一帯で力を持ったイスラム指導者の一族、アパク・ホージャ家の墓廟。香妃がここに葬られているという伝説には史料の裏付けがなく、喀什地区行政公署の香妃園の案内でも、香妃のモデルは乾隆帝の妃の一人だった容妃とされています。容妃自身は、河北省の清東陵にある裕陵妃園寝に葬られています。

庭園には、石榴籽塔(ザクロの種の塔)と呼ばれる木造の塔も立っていました。何層にも重なった木の柱と梁が、ポプラの木々と並んで青空に伸びています。香妃園は霊廟を中心に、回廊や庭園、像などを配した広い公園として整備されていて、回廊や庭園を含めると見どころは霊廟の外にも多く、園内のところどころにはベンチも置かれていました。見学にかかった時間は、庭園と霊廟を合わせて1時間ほどでした。

庭園の奥に建つのが、アパク・ホージャ廟。1640年に建てられ、アパク・ホージャ一族5代、72人が葬られていると伝えられる墓廟で、1988年に中国の全国重点文物保護単位(第3批)に指定されています。正面には緑と青のタイルで覆われたミナレットが両端に立ち、中央に大きなアーチの入口があります。内部は撮影禁止でした。


ミナレットの上部には、黄色と白の透かし窓がぐるりと並び、その上に三日月を載せた小さなドームがのっています。側面の壁は上端にギザギザの装飾が並び、青いタイルのアーチが連続するデザインで、ミナレットの緑や黄色の縞模様と組み合わさった色使いが見事。正面から見たときよりも、横に回り込んだほうがタイルの細かな模様と壁の長さがよく分かります。望遠で切り取ると、真っ青な空にタイルの青と緑がよく映えていました。



近づいて見ると、壁を覆うタイルは青い花模様を一枚ずつ描いたもので、色の濃さや模様の線がタイルごとに少しずつ違っています。足元には花の文様を浮き彫りにした石材が敷かれ、緑のタイルを積んだ壁の間には、繊細な彫刻を施した装飾パネルがはめ込まれていました。青、緑、白、黄色の組み合わせは、昨年ウズベキスタンのヒヴァで見たタイル装飾にも通じるところ。シルクロードの東と西で、同じ系統の装飾文化が続いていることを感じられます。


霊廟の横には、高低礼拝寺(高低モスク)と呼ばれるモスクがあります。中国語、ウイグル語、英語の3言語で書かれた説明板によると創建は1873年で、2つの部分からなるモスク。面積は大きくないものの建築様式は独特で華やかで、内部の大きな柱には細かな彫刻が施され、天井には藻井式の彩色図案が組み合わされている、と紹介されていました。外から見ると、木の柱が並ぶ柱廊の奥に土色の壁が続き、脇には細身のミナレットが立っています。

帰り道、参道の脇にある細長い池には、緑のドームの霊廟が水面に映り込んでいました。手前の木の枝越しに眺めると、正面からとはまた違った落ち着いた表情に見えます。香妃園は入場料40元。園内の高低礼拝寺とあわせて霊廟のタイル装飾と庭園の散策をまとめて楽しめる場所でした。
改装中で入れなかった高台民居と、トマトと卵のスープの昼食

香妃園を出て古城の方面へバスを使って戻ると、色づき始めたポプラ並木の向こうに、この日の午後に上る昆仑塔が見えてきます。円盤を重ねたような展望部を載せた細長い塔は、カシュガルの街のどこからでも目に入る目印。古城から離れた香妃園の周辺は広い道路と並木が続く街並みで、10月中旬の乾いた青空の下、ポプラの葉がちょうど黄色く変わり始めている時期でした。次に向かったのは、崖の上に家が重なる高台民居です。

高台民居は、高さのある崖の上に土色の家が積み重なるように建つ地区で、カシュガルを代表する景観の一つ。ところが訪れたときは改装中で、入口の柵には「高台民居景区升级改造施工温馨公告」(高台民居景区の改修工事のお知らせ)が掲げられていました。高台民居景区管理処の名義で日付は2026年6月10日。景観と観光施設を全面的に改修するため、景区全域を封鎖して工事を進めると書かれていて、完成の時期には触れておらず、中を歩けなかったのは残念なところでした。


昼食は、「大盘鸡」の看板を掲げた店で。大盘鸡(ダーパンジー、直訳すると大皿の鶏)は鶏肉とジャガイモを大皿で煮込む新疆の名物料理ですが、この日に頼んだのは、トマトと卵に青菜を合わせたスープ。ウイグル料理ではなく中国の家庭料理の西红柿鸡蛋汤(シーホンシージーダンタン、トマトと卵のスープ)です。ウイグル料理の店が多いカシュガルでも、こうした中国の家庭料理も普通に食べることができるので、ウイグル料理の羊肉につかれたときにはこちらもベターかも。とはいえ、量が多すぎてしんどかったんですけども…
昆仑塔から見下ろすカシュガル。整えられた旧市街と霞む新市街


午後に上ったのが、昆仑塔(崑崙塔、カシュガルタワー)。2023年に開業した高さ169mの塔で意外と最近できたばかりの塔です。入場券は45元。入口の上には「昆仑」の文字が掲げられていました。展望層まではエレベーターで48秒で一気に登っていくことが出来ました。訪れたときはまったく混んでおらず、塔内のカフェも営業していなかったので、展望台は30分もいれば十分です。


展望台から見下ろすと、足元には吐曼河(トゥマン川)がゆるやかに曲がりながら流れ、その両側には建設中の高層ビルとクレーン、大型バスがまとまって止まる一角が広がっていました。川沿いには緑の並木が続き、遠くの街並みは霞の中に溶けています。古城の土色の家並みとは対照的に、川の周辺では新しい建物の建設が進んでいる様子。カシュガルが観光地であると同時に、いまも開発が続く都市であることがよく分かる眺めです。
望遠で新市街の方向を切り取ると、霞の向こうに大きな冷却塔のような建物と、高層住宅の群れが浮かび上がります。頭上は晴れていても遠くは白く霞んでいて、地平線まではっきりとは見通せませんでした。遠景がすっきり見えなかったのは惜しいところ。それでも、中層のビルや大きな建屋が隙間なく続く市街地の広がりからは、カシュガルがオアシスの古い街であると同時に、人口の多い大きな都市でもあることが伝わってきます。

塔の南西側、古城の東の縁には崖の上へ続く大階段とその先の中国風の楼閣が見えました。楼閣は耿恭祠(耿恭を祀る祠)で、手前のギザギザした壁は古城東側の城壁です。階段の脇から奥にかけては、土色の四角い屋根がびっしりと密集。塔の上からは、城壁と階段、祠堂、その奥の屋根並みが一続きに見えました。階段を上り下りする観光客の姿も小さく見えています。

DJI Osmo Action 2の超広角で古城の東側を写すと、城壁に沿ってカーブする道路の内側に、土色の屋根が地平線の近くまで広がっていました。手前には並木の大通りと、池や階段状の客席を備えた一角。左奥には観覧車も見えます。これだけの範囲の古城を一望できる場所はほかにないので、カシュガルを訪れたら一度は上っておきたいところです。
ここでカシュガル古城の歴史について。カシュガル旧市街の大規模な改造は2009年に始まり、当局は地震への備えを理由に、古い家屋の取り壊しと建て替えを進めました。移転した世帯の数は報告によって幅があり、米議会・行政府中国委員会(CECC)が中国メディアの報道から集めた数字では、2009年の取り壊しだけで4,700戸を超え、2009年末までに新しい住宅へ移った世帯は11,099世帯とされています。CECCはこの5年計画の当初の目標を、少なくとも5万世帯を耐震住宅へ移すことと紹介しています。計画全体では6万5千世帯、約22万人が対象になるとする2009年5月の報道(China Digital Times転載)もありました。
在米の人権団体ウイグル人権プロジェクト(UHRP)の2020年6月の報告書「Kashgar Coerced」は、2009年夏に6万5千世帯、20万人超の住まいを移転・再建する計画が示されたと記載しています。報告書は、当局が旧市街の85%を取り壊して再建する方針を示し、のちに計画した85%を達成した可能性が高いと評価しています。RFA(自由アジア放送)は2024年、この報告を引いて旧市街の85%が取り壊されたと伝え、残った部分が観光地として改装されたと報じました。
塔の上から見えた整然とした屋根並みや大階段は、こうした大改造の先にある景色です。展望台から見下ろした旧市街は美しく整っていて、絵はがきのような眺めでした。一方で、路地に入ると古びた景観がきちんと保たれていて、造り直された街だということを忘れそうになる場面もあります。それが良いのか悪いのかは、2日間歩いた時点でも決めきれないところ。整った屋根並みの下にかつてどんな家が建っていたのかは、塔の上からは分かりません。

真下に目を移すと、ポプラ並木に挟まれた大通りを、トラックやSUVが行き交っていました。上から見ると並木の影が道路にくっきりと落ち、信号のある交差点に向かって進む車列が、模様のように見えます。
夜の古城で拌麺(和え麺)。香妃園と昆仑塔を巡ったカシュガル2日目の締めくくり


2日目の夜は、たたび古城へ。屋台の赤いテーブルクロスの上で食べたのが拌麺(バンミエン)です。拌麺は直訳すると混ぜ麺、和え麺のことで、茹でた麺に具とタレを絡めて食べる新疆の定番の麺料理。手打ちの太い麺に唐辛子のタレをかけ、キュウリの細切りとひよこ豆をのせた一皿で、皿にはビニール袋がかぶせてあり、袋ごと外せば皿を洗わずに済むようにするためのもの。屋台の席からは、ライトアップの始まった古城の通りを眺めることができました。

食後に歩いた夜の古城は、昼間とはまた違った表情でした。暗くなりかけた青い空の下、建物の壁や木々が下からの照明で浮かび上がり、人通りの少ない通りが奥まで続いています。翌日はいよいよパミール高原への日帰りツアー。帰り道に菓子パンや水、ビタミンウォーター、酸素缶、のど飴、ナンを買い込み、標高3,600mの高地に備えました。結果的にこの中には要らなかったものもありましたが、初めての高地ツアーの前夜は、念には念を入れたくなるものです。
シルクロードのオアシス都市を自分の足で歩きたい方に最適なカシュガル古城

上海での乗り継ぎを挟んで、東京から丸1日かけてたどり着いたカシュガル。到着してからの2日間で、汗巴扎の屋台とプロフの大鍋、土色の路地と土産物店、青と緑のタイルが美しい香妃園、昆仑塔から見下ろした旧市街を回ることができました。高台民居に入れなかったのを除けば、予定していた場所はほぼ回れています。上海の乗継ホテルの差額は3,611円、宿は4泊27,192円、香妃園は40元、昆仑塔は45元と、費用を抑えながらでも中身の濃い滞在ができる街です。
一番印象に残ったのは、やはり古城の路地と屋台。3元の焼き麩を片手に歩き、大鍋からよそわれるプロフを食べ、土色の壁が続く路地に迷い込む時間は、ほかの街ではなかなか味わえないものでした。シルクロードのオアシス都市を、自分の足で歩いて確かめたい方には、カシュガル古城はぴったりの目的地になるはず。ウズベキスタンのイチャン・カラを歩いた経験がある方なら、タイル装飾や料理の共通点と違いを見比べる楽しみもあります。
一方で、木々に吊るされた国旗、人民広場の標語、街のあちこちで見かける警察やパトカー、路地の監視カメラも、屋台やタイルと同じくらい目に入ってくる街でした。旧市街が2009年以降に大規模に造り直された経緯も、塔の上から見下ろした整った屋根並みと一緒に知っておきたいところです。翌日は、受け取ったばかりの辺境通行証を持って、雪山が連なるパミール高原へ向かいます。
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